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「おはよう。ナターシャ」

「おはようございます。ルートヴィッヒ様」


今朝のことなど、何もなかったように笑顔で挨拶をしてくる王太子に、私は、こいつの、いえ、失礼、王太子の面の皮の厚さに驚きました。…えぇ、驚きなど、表情に出していませんけど。内心は、驚いておりました。わたくし。

私が帰ったことを使用人から、聞いていないのでしょうか。

聞いていて、この態度と言葉でしたら、驚き通り越して、恐怖です。


「今日、俺を訪ねてきたそうだが、」


あ、さすがに知っていましたか。


「何の用だ」

「え?」

「事前に連絡をするのは、マナーだろう」

「は?」


いや、お前が誘ったんだからな!


「事前に連絡…ですか?」

「ああ」

「…太子が、私を朝食に誘ってくださったのではないのですか」

「……ああ」

「……」

「まぁ、俺も忙しいからな。しかたないだろ」

「……」

「これからは、事前に連絡するように」

「…かしこまりましたわ」


私は、にこっ、と笑顔を太子に向けます。

その笑顔を見た太子は、「ああ。気をつけろよ。お前は、覚えが悪いから」とまるで、自分が許したみたいな顔をしていうものだから、早く婚約解消してーな。と私は、思います。


「それにしても、今日も、なんだかお疲れのようですわね。昨日も夜遅くまで、勉学に励まれていたのですか?」

「ああ。私は将来、この国の王となる男だからね。民のため、頑張らねばならない」

「そうですか。素晴らしき王を持てて、私たちは幸運ですね」

「そうだな」


お前が、励んでいたのは、夜のお勉強だろうがっ!このくずっ!何をすました顔で、言ってやがるっ!なにが、「そうだな」だ!お前なんか、第2王子の足元にも及ばねぇから!

見習って、他国の情勢とか勉強しに行ってこいっ!

…いや、逆に失礼な態度をとりすぎて、戦争になってしまうかもしれない。

ならば、おとなしく男爵令嬢と夜のお勉強をさせておいたほうが、この国のため…?


…おっと。

あまりの王太子の態度と言葉につい、乱暴な言葉が出てしまいました。

貴族たるもの、言葉と態度は、表に出すな。

表面は、繕ってなんぼ、スキを見せても、相手に弱みを見せるだけ。

隙間にトゲを差し込むのだ。

トゲに気づける者こそ、相手にせよ、と母に言われてきましたからね。

そう思いますと、この男は、ある意味羨ましい。

何も考えずとも相手を苛立たせ、それでいて、その立場ゆえに決して、ことを荒げられることはない。心配しなくてもいい立場ですもの。

まぁ、こんな能無しになりたいなんて、まったく思いませんが。


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