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「そういうわけで、私、エドマンド王子と婚約することになりました」

「婚約どころか結婚したいけどね」

「それは早すぎますので、一応猶予期間が必要かと思いまして…あぁ、それとあの元婚約者の男は、婚約解消ではなく、婚約破棄に変更したいのですが、まだ間に合いますか?」


怒涛の情報量にお父様は、呆然としておりました。あれだけ、あの男を擁護していた娘が、いきなり手のひらを返して、婚約破棄にしたいと言っているのですから、当然かもしれません。


「別に婚約破棄は、大丈夫だが…え?婚約?第2王子と?」

「いけませんか?もしかして、体裁がよろしくありませんか?王太子から、乗り換えた女として悪評が流れてしまうのは、仕方がないことと割り切っているのですが…」

「…あぁ。いや、たぶんそれは大丈夫だろう。うちは、良くも悪くも王族と並ぶほどの名門だからね。納得はされるだろう。むしろ…」

「…?」


お父様は、そこで言葉を濁した。

なにか言いにくいことでもあるのかしら。と待っていると、


「むしろ、王族の方が悪く言われる可能性がある…ですよね?」

「…あぁ」

「えっ?」


二人して、苦笑していて、どうやらお互いわかっているようです。

それについていけないのは、私のほうです。

どうして、王族が悪く言われるのでしょうか。


「なぜ、王族が悪く言われるのでしょうか?」

「兄上の日頃の行いかな?あまりにも兄上は、目立ちすぎたからね。おかげで、この家の権力と財力の底知れなさを知らしめるに良い広告塔だったから」

「その通り。…だから、王族が私たちの財力を手放したくないから、お前を第二王子の婚約者にしたと噂されてもおかしくはない」

「そ、そんなにこの家は、お金持ちだったのですか…?」

「あぁ」

「君、箱入りだからね」

「否定は出来ません…」


王子からの言葉に返す言葉もございません。

確かに私は箱入りです。

大事にされていると思います。自分でも。

よほどのことがない限り、お父様は私の好きなようにさせてくれますし、このヴィクターとの婚約だって、お父様は本当はもっと早くに解消したかったご様子ですのに、しなかった。

それは、私が嫌がったからです。

お父様は、昔からとても私をかわいがってくださっています。

そんな私が箱入りと言われても仕方はないのですが、少々思うところもございます…。


「たしかにナターシャは、箱入りだが、それが問題でも?」

「いえ、別に。これからは私が彼女をお守りしますし」

「どうだかな」

「今は、わからなくとも、これからわかっていただきます。もちろん、彼女にもね」


そう言って、第2王子は私を見て、パチンとウインクしてきます。

ずいぶんと様になっており、私はある意味感動してしまいました。

まるで、映画俳優のようにウインクを決められる男性なんて、そう多くはいませんから。


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