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そうと決まったら、お父様にさっそく相談しましょう。

お父様は、婚約解消ではなく、婚約破棄にしたかったようで、ずっとうろうろしていましたから、まだ手続きもまだでしょう。

しかし、婚約破棄と知ったら、すぐさま用意してくれるに違いありません。


「それでは、王子。どうもありがとうございました。なんだか、私、生きる気力に満ち溢れて、元気になりました」

「えっ」

「それでは、王子もお元気で。ごきげんよう」


私は、そうして王子に背を向けて、とっとと部屋から出るつもりだったのですが、王子に手をつかまれて、阻止されてしまいました。

踏み出した足が、たたらを踏んで足踏みです。


「ちょ、ちょっとまってよ!」

「なんでしょうか。私、今とても忙しいのですが」


構っている余裕は、ないというのに、いったいまだ何の用事が…あ。


「僕の告白の答えは?」

「そうでしたね」


いけません。

どうも私は、反射的に思考が切り替わってしまって、すぐに忘れてしまうのです。

王子に告白されてことを忘れていました。

この様子では、どうもドッキリとかではないようです。


「私のことが好き…というのは、本当ですか?」

「ほ、本当だよ!昔から、ずっと…。本当は、君の婚約者になるのは、僕のはずだったのに…約束だって、したのに…君は、兄上を選んだから…」

「え?」

「君は、どうせ覚えていないと思うけど、僕が8歳だったから…君は10歳かな。…その時にお城の中庭で会ったことがあるんだ」


―あなたに好きな人ができるまで、僕を婚約者にしてくれませんか?

―もしも、結婚するまでに好きな人ができなければ、僕を好きになってください。

そう言って、真っ赤になりながら、私に告白してきた小さな男の子。

…まさか。


「うそです…」

「嘘じゃない。僕たちは、確かに会ったことがあるんだよ。兄上よりも、もっと早く」

「だって、…だって…え?どういうこと?私に告白してきたのは、…ヴィクターではないの…?」

「どうしてそんな勘違いしてしまったのかわからないけど、僕は確かに告白した」

「中庭のバラ園で…?」

「うん」

「……ヴィクターは、嘘をついていたのね…」


あの頃のヴィクターは、ずいぶんと自分の容姿にコンプレックスを抱いていたようだった。

しかし、顔立ちは父親似で、とうぜん兄弟なのだから彼らの顔立ちも似ていた。

ヴィクターは、16歳になるまで、ずっと銀色に髪を染めていたから、わからなかったけど、…。


「私のただの勘違いで、…うそでしょ…」

「それより、隣国に嫁ぐなんて、嘘だよね?この国にいてくれるよね?僕と…今度こそ一緒になってくれる?君が言ったんじゃないか。結婚するまで、好きな人ができなければ、僕を好きになってくれるって」

「あああああ…!!!」


恥ずかしさのあまり、死んでしまいたくなったのは、人生でもこの時ほどのものはありません。


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