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そのころ、ヴィクターは、私との婚約が解消されるなんて、思ってもいなかった。

自室で、思うがままに惰眠をむさぼっていたところだったが、それを第2王子の手で、起こされていた。


「兄上。いい加減、起きろよ」


体を揺さぶってくる弟の手を容赦なくたたき、不機嫌な雰囲気を隠そうともせずに、体を揺らした。ベッドに乗りあがっている王子の体は、ベッドの揺れに合わせて、大きく揺れた。


―まるで、トランポリンに乗っているみたいだな。兄上の体重、また増えたみたいだ。

人の体って不思議だ。よくもまぁ、これだけ肥大できるものだ。

いったい、何を食べればここまで大きくなれるんだか…。

最近では、下の弟達は、兄が逆に病気になれば、おとなしくなるのでは。と言い出す始末。自分としては、病気になったらなったで、また面倒になると思っている。今ですら、面倒なのに、もっと人の手を使って動くようになるだろう。

しかし、次のヴィクターの発言に、思考が一瞬止まる。

布団をかぶっているから、くぐもっていた声で、


「うるさい。俺は、次期国王だぞ」


といった。

ヴィクターのその言葉に第2王子は、思わずといった様子で吹き出した。

王子の笑い声を不審に思ったのか、布団から頭がひょっこりと現れた。


「ははは。兄さん。まだ何も知らされていないんだ。かわいそうに。誰かが、教えてくれてもよさそうなものなのにね。みんな、兄さんが、次期国王になることを内心嫌がってるってのは、本当みたいだね。それとも人徳がないのかな?逆らえない使用人の女性に対して、セクハラするような変態だもんね」

「な、ななななっ!?」


なんだ。その噂は。だとか、セクハラしたことをよりにもよって、こいつにばらしたのか。だとか、あの女、ただではすまない。名誉毀損で、牢屋に入れてやる。あの女、顔はよかったし、胸も大きかったから、牢屋に入れたら、自分の性奴隷として使えないか、だとかいろいろなことが、頭を巡った。

すでにヴィクターの下半身は、自分の妄想で、血が巡り、ヴィクターのヴィクター君は、元気いっぱいだった。

もちろん、自分の兄が、罵倒されたのに、自分本位の妄想で、息子を大きくしているなんて、第2王子は、知る由もない。単純に馬鹿にされたから、興奮しているのだと思っている。


「かわいそうに。いろいろと考えていたみたいだけど、兄上の夢の計画も終わりみたいだよ。それにしても、兄上たら、本当に色ごとのことしか頭にないの?なにこれ。俺が国王になった暁には、国王を性接待するための若い女性による組織の設立をするって。馬鹿にしてんの?」


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