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うつむいているその顔から、どんなことを考えていらっしゃるか、私には判断がつきません。落ち込んでいるのか、悲しんでいるのか、それとも私が、殿下に言われた言葉に対して、なにも考えていないから、呆れてる?

私が、もう少し努力すればよかったのでしょうか。

女の魅力を上げるために努力を…。

殿下の好みにあった服装をするだとか、メイクを頑張るだとか、もっとあったかもしれません。ですが、これには理由があります。

殿下にも説明したことがありますが、次期王妃教育というのは、なかなかにハードなのです。タイムスケジュールは、みっちりと秒から決まっておりますし、今の時代、女は勉強などしなくてもいいなんて言う人は、とても少数です。

それが、国の母と呼ばれる存在になる人間が、粗末な成績をとっていいわけがありません(まぁ、次期国王が落第すれすれの成績でしたが)。

学業に教育にそれから、家の手伝いに、といろいろやっておりましたから、殿下が学校に来られた際に会話を交わしたり(そもそも殿下が学校に来ない週も多かったので、会えなかったり)、食事を共にするくらいであれば、いいのですが、一日、ともにいるというのは、難しかったのです。

子どもの頃の私は、今よりも物覚えが悪かったので、なおさらでした。


なるほど。そこを突かれたのかしら。


……いや。その理屈は、おかしいかしら。

そもそも、どうして殿下はあれほど遊びまわっているのかしら。素行も成績も、とても悪い。スキャンダルだって、今は必死に隠されておりますが、目撃者多数なせいで、市民からの噂で、殿下の下半身事情は、知れ渡っています。

と、私が長考している間にお父様が、ついに動きました。


くわっ!とお父様は、目を見開き、立ち上がると、


「婚約破棄だ」


と、静かな声で言いました。


「婚約解消という話では?」

「そんな生ぬるいことができるか。お前に魅力がない?それは、あいつの目がおかしい。あいつは、しょせん体しか見ていない」

「それでは、私の体に魅力がないということになりますが」

「そこがおかしい!…詳しくいうとセクハラになるから、お父様はお前の魅力について語れないが、そもそも殿下の体こそ魅力がないだろ!なんだ!久しぶりに見たら、また太っているではないか!あれでは、夜の生活だって、殿下が上に乗ったら、ナターシャの骨が折れる!」

「否定できませんわ」


殿下は、昔から動くのが好きな方ではなかったから、ふくよかな方でしたが、最近ではますます増えているそうなのです。

おかげで、少し歩くのも苦しそうに息をしていらっしゃいます。


「成績も、素行も、性格も悪い。それでお前の体をよく悪く言えるな!おまけに金しか魅力がない…?王家の血筋が流れているだけの男が、偉そうに…」

「実際、えらいのですから仕方ありません」


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