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「ヴィクター。私に隠していることはないか」

「隠していること…ですか?何もないですが、どうしてですか?」


きょとん、としている我が子にこめかみに青筋が立った。


「お前、まさかばれていないと思っているのか」

「ですから、何がですか?私は、父上に隠し事などしておりません」

「お前が、城に女を連れ込んでいることは知っている」

「…ああ。彼女ですか。彼女は、友達です。私の勉強を見てもらっているのです」

「家庭教師がいるにも関わらずか?」

「はい」


いけしゃあしゃあとのたまう愚息に思わず、私は叫ぶ。


「ナターシャ嬢が、お前に愛想を尽かしたらどうするんだ!貴様が、無下にしていい相手ではないのだ!なぜ、それがわからない!!!」

「は?ナターシャですか?…しかし、あの女は、つまらない女です。ニコニコと笑うばかりで、会話も盛り上がらない。女のくせして、成績もトップだ。お高く留まっている嫌な奴ですよ。そのくせ、王妃教育には、熱心で見ていて、痛々しい。まったく、私が選んだからとつけあがっているのです」

「馬鹿か、貴様はっ!お前が王太子なのは、ナターシャ嬢が選んだ男だからだ」

「は?ご冗談でしょう?」

「冗談なのは、お前の成績だっ!お前は、私を馬鹿にしているのか?!学校に呼び出されるなど、初めてのことだ。お前、学年で最下位だったそうだな」

「王様を学校に呼び出す教師なんているんですか…?」


引くのは、そこではない!

電話をもらったときは、え?私行くの?とか、本気で思ったが、いざ行ってみたら、


「いや、おたくの息子さん、ちょっと学業も私生活もひどすぎますね。ご家庭の教育は、どうなっているんですか?」

「あ、…すみません。息子が何かしましたか?」

「いやもうひどすぎますよ。まずは、この成績。一向に上がらないんですよね。全教科0点とか舐めてるんですか?あと、素行も悪いです。空き教室で、致してるのが、目撃されている上に遅刻、無断欠席が多すぎます」

「え!?毎朝、学校に行っている姿を見ているのですが、」

「でも、実際、学校に来てないんですよ。聞くところによると、平民のホテル街で、目撃されたとか」

「いや、まさか、うちの子に限ってそんな…」

「このままじゃ、停学…いや退学処分もありえます」

「そこを何とかできませんか」

「こちらも指導はしておりますが、仮にも息子さん王太子でしょう?」

「はい…」

「こちらとしてもねぇ…権力を盾に使われたら、たまったものじゃないんですよ」

「はい…愚息が、大変申し訳ございませんでした」

「だからね、お父さんもお忙しいとは思うんですけど、もう少し息子さんと話し合ってみてはくれませんか?」

「はい…はい…おっしゃる通りです。息子と、少し話してみます」




「って、言われた私の気持ちがわかるかっ!!!」

「ええっ!?そんな国王に普通の親に言うようなこと言った教師いるんですかっ!」


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