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狙われるもの

 ーーぼんやりと目を開けたセシリアは、自分がソファに横たわっているのに気付いてギョッとした。

 慌てて身体を起こすと、頭がズキズキ痛んで眩暈がし、吐きそうになって口元を押さえる。


 ーーーーこの頭痛は普通じゃない。


 薬を盛られたのかもしれないと察したセシリアは、青褪めて自分の身に異変が無いか真っ先に調べた。

 幸い着衣に乱れは無く、痛みは頭だけでなのを確認して胸を撫でおろす。


 ひとまず安心してから、セシリアは自分が置かれた状況を確かめるために顔を上げた。


 セシリアが居たのは、暖炉が設えられた狭い木小屋の中らしい。

 室内には、質素なソファセットとテーブルが中央に置かれている以外は何もなく、生活感の無い殺風景な部屋である。

 もしかして森の管理人の管理小屋ではないだろうか?

 セシリアはふらつきながら立ち上がり、ドアの前に進んで取っ手を攫み、押したり引いたりしたが鍵がかかっているらしく、全く開かない。


 「……何これ……何が起きてるって言うの?」


 まさか監禁されているのか?

 唖然としてセシリアはその場に突っ立った。


 ーーちょっと待って、いつ連れ去られたの?


 誰かに拉致された記憶が無いのだが、どうなっているのか。

 たどってみると、最後の記憶が皆でお茶を飲んでいるところで途切れている。

 まさか、みんなの見ている前で薬をお茶に盛られていたと言う事⁉と、思い至って背筋が凍りついた。

 

 誰が何の目的で⁈と考えたが、頭痛が酷くて額を押さえる。

 ーーダメだ、考えがまとまらない。


 いや、それだけでなく、自分を拉致して何をしようとしているのかーー誘拐なら、父から身代金は取れないほど放置されているのは周知の事実なので在り得ないし、メリットが思いつかない。

 怨恨なら、気を失っている間に危害を加えたほうが手っ取り早いから、殺害や暴行が目的ではないだろう。

 

 今は何時か分からないが、さすがに一緒に来た母がセシリアが居なければ気付くだろう……多分。

 今日は午後三時頃まで、狩りのはず…………昼食時には気付いてくれると思いたい。

 母でなければ、シモンとベルトラン伯爵に期待する事にして、セシリアは室内を見回した。


 ーーしかし見事に物が無い。

 窓が無いのでドアを壊せる武器になりそうな物を探すが、暖炉内に薪すら無く、これは監禁するために余計な物を撤去したのだろう。

 だとすると、これは計画的犯行だと言う事になる。


 セシリアはあちこち見て歩き、ソファの下まで覗きこんだが塵ひとつなく、諦めて再びソファに腰を下ろした。

 盛られたのは睡眠薬だったのか、薬の作用で酷くだるい。

 ーーもしかして、キツネ狩りに参加する様に手紙をよこしたマリウスの仕業なのだろうか?

 こうなると、一番疑わしい。


 マリウスはセシリアを監禁してどうするのだろう。

 まさか、まだアベル王子の愛人にさせたがっていて、何かするつもりなのだろうか?

 以前、王宮では逃げられたが、ここでは逃げ場が無くて詰んでいる。

 ーーもう、不敬罪がーーなどと言っていられない。

 万が一無体な事をされるようであれば、押しのけて逃げようとセシリアは覚悟を決めた。


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