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ブルック侯爵家

 

  おかしいわ、おかしいーーーー私の方がクリストファー様と釣り合うのに


 アンジェリカはその日、父親が帰るのを待った。

 夕食も入浴も済み、ネグリジェに着替えて寝る時間になってから、やっと玄関が騒がしくなる。

 それまで侍女に念入りに髪をくしけずらせ、ベッドの上で体中をマッサージをさせていたのだが、父の帰宅に気付いたアンジェリカは、侍女の手を振り払ってベッドを降り、あわててショールを肩にかけてから廊下に躍り出た。


 階下に駆け降りると、父親のブルック侯爵は妻である侯爵夫人と共に話しながら書斎へ入る所で、父のジャケットを抱えて後ろに付き従う執事が先にアンジェリカに気付いて「お嬢様……!」と驚いた顔をした。


「アンジェリカ?どうしたんだ、もう寝る時間だろう」

「ーーアンジェリカですって?まあ、そんな恰好で、はしたないわよ」


 振り返った父親が目を丸くし、その隣で母親が顔をしかめる。

 アンジェリカは追い返されないうちに「パパ!話があるの!」と、急いで早口で言った。


「重要なお話なの……!お願いだから、聞いて欲しいの!」

「アンジェリカ、お父様はまだお仕事がーー」

「……いや、いいだろう。すぐに済むなら構わない。入ってソファに座りなさい」


 母親は渋ったが、父親が許可する。

 アンジェリカは、やった!やっぱりお父様は優しいわ!とほくそ笑みながら、書斎の中に置かれたソファに腰を下ろした。


 母親はすぐにアンジェリカのする事にケチをつけ、あらゆる事に目くじらを立てる。

 その点、父親は忙しくてあまり顔を合わせないが、アンジェリカをとても可愛がってくれる。

 

 ーーお母様は弟の方が大切なのだわ。侯爵家の跡取りですものね。

 だから弟ばかりひいきしているのよ。全く嫌になるわ。


 そう考えると不快になるし、自分は何て可哀想なのだと涙が出て来る。

 しかし、きっと父親ならばアンジェリカの味方をしてくれるだろうと期待していた。


「話とは何だ?」


 アンジェリカの向かい側のソファに、母親と並んで座った父親が足を組んで尋ねる。

 父親と向き合って喋るのは久しぶりである。

 最近特に忙しいらしく、ここ一週間くらいは夕食も一緒にとれていない。

 後はいつ会えるか分からないから、話すなら今しかない、とアンジェリカは意気込んで口を開いた。

 

 




 

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