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道化師たち 3

 傍から見て簡単だと思っていたのに、アンジェリカは自分が両親を助けようとした時、何をしたらいいのか分からなかった。


 使用人達をなだめる為に食べ物やお金を与えようとしても、与えられるものがほとんど無い。

 自分達の食べる物にも精いっぱいだったからだ。

 盗みを止めるにも、自分一人では難しいからと警察に相談したら『使用人達に盗まれているのはアンタの家だけじゃない。今、忙しいから後でな!』と話を聞いて追い返された。


 何とか家具を盗もうとしていた使用人を一人捕まえたが、別の使用人が盗んで逃走するのでキリが無い。

 どうしたらいいの⁈と、泣いていたら、正妃様とセシリアが街頭で食糧配布を行い、間もなく輸入食品が入って来て市場に出回り泥棒は一気に減少した。


 ――――本当に有難かった。同時に、一人で何とか出来ると思っていたのが錯覚だと思い知った。


 食糧配布なんて、分かり易い慈善事業だと決めつけていたけれど、セシリアは本当に必要な事をしていただけだった。



 ルイーゼもまた、良い学校に通って素敵な男性のお嫁さんになるのよ!と意気揚々としていたけれど、ここ数年はそんなものより兄弟姉妹たちのお腹を満たす食料が欲しかった。

 家族がひもじい想いをしない様に可愛くてお気に入りだったドレスを売り払ったが、すぐにお金が足りなくなる。

 そんな困っていた時、助かったのが食糧配布だった。


 セシリアが行っていたボランティアを、良い子気取りと陰口をたたいていたのが申し訳なくなった。

 こんな自分が恥ずかしい……そう思っていたのが自分だけではなくアンジェリカもだったとは。



「だから何だというの?困っている人間に物をあげるのなんて当然じゃないの。偉くも何ともないわ」


 平然と言い放ったエウノミアに、アンジェリカとルイーゼは呆気に取られた。

 困っている人間を助けるのは当たり前だと言うが、エウノミアが見返り無く誰かを助けるのを見た事が無い。


 アンジェリカとルイーゼは、エウノミアが妹と比べられてコンプレックスに苦しんでいるのに薄々気付いていた。

 正直、可哀想だと思った事もある――ただ、同情できなかった――何故なら、エウノミアは自分だけが可哀想だと思っているからだ。


 アンジェリカとルイーゼは成長するにつれ、自分の行いがいけなくて家族や周囲から冷たくされると気付いた。

 周囲の人々にも感情があって、お互いに相手を尊重しないと関係が悪くなると学んだのだ。

 優しくされたければ自分も優しくなって、お互いに大切にし合わなければならない。

 それは片思いの事もあって、相手がこちらを嫌いなら仕方なく受け入れる事が肝要だ。

 相手にも意思があるのだから、こちらの思い通りに動く訳がないのだ。


 だが、エウノミアは本人が思うより両親から愛情を注がれていた。

 エウノミアが欲しい物は買い与えられ、持ち物は妹と平等に豊富に与えられていたのだ。

 本当の飢えや孤独とは無縁な状態で、地団駄ふんで妹と同等に扱えと声高に要求している。

 要求すれば与えられると思っているあたり、甘やかされて育ってきたのだ。

 

 アンジェリカもルイーゼも、他人が助けてくれるとは限らないと思っている。

 無償で助けてくれるほど他人は甘くない。

 それが分からないエウノミアには付き合いきれない、ふたりは完全に呆れ返っていた。


「――そう。貴方がそう思うなら思えば良いんじゃない?それに、昔の行いを反省するのは早い方が良いわ。私はもう反省したの。貴方にとやかく言われる筋合いはないわ」


 キッパリ言ったアンジェリカが、もう話は終わりだと言わんばかりに踵を返す。


「待ってよ!」と、エウノミアがあたふたするが、その様子を尻目にルイーゼもエウノミアに背を向けた。


「エウノミア、改心するなら今だと思うわよ。もう貴方に付き合う義理はないもの。そのままだと貴方、ずっと独りぼっちよ」


「!」


 手を伸ばしても止まらずに去るふたりに「何よ、偉そうに……!」とエウノミアが悔しそうに毒付く。

 追いかけようとしたが、ふたりの態度に腹が立ったエウノミアは伸ばした手をぎゅっと握りしめて恨みがましく睨みつけた。


 


*ご覧いただき有難うございます。

 曜日をまたいでしまいました。申し訳ありません汗

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