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道化師たち 2

 ――今更何よ!とエウノミアが苛立つ。

 

 セシリアが気に入らないからと喜んで虐めていたのはアンジェリカだ。

 ルイーゼは家が貧しくて援助が必要だと言うから、お金をあげるからセシリアに嫌がらせするように命令したら、喜んで従った。

 二人共、自分の意思で行った事だ。強要した訳ではない。

 エウノミアだけが悪者になるのは納得出来ない。


  ――――だって、クリストファーを好きになってしまったんだもの。


 クリストファーの事を考えると、胸が高鳴ると同時に苦しくなる。

 クリストファーを好きになるつもりはなかったのに、優しくて、穏やかな彼に惹かれてしまった。


 自分より可愛い妹がいつも他の人達の注目になっていて、エウノミアは目を向けてもらえない。

 皆の中で、自分はいなくてもいい存在だった。

  可愛くない、愛嬌が無い、優れた取り柄が無い……忘れられていたり、無視される事すらあった。

 だけどクリストファーはきちんとエウノミアを見てくれて、妹だけ贔屓もしないし大事にしてくれた。

  他の人とは違う――エウノミアをちゃんと見てくれたのはクリストファーだけだった。


 時間が経つにつれて、優しいクリストファーが欲しいと思った。

 

 セシリアを好きな事は伝わって来ていたけど、婚約したんだし、いつか振り向いてくれるんじゃないかとエウノミアなりに頑張ったのだ。

 綺麗になれるようにお洒落をして、ダイエットもした。

 勉強にも励んだし、取柄が欲しくて乗馬や美術鑑賞、刺繍、礼儀作法も頑張った。

  ――だけど、エウノミアには致命的に才能が無かった。


 平凡で凡庸で、皆の中で霞んでしまう。

 どう足掻いても現実は残酷だった。


 一方で、セシリアは何でも上手くやる才能を持っている。

 

  ――――神様は不公平だと、何度も泣いた。

 


 クリストファーと釣り合わない……クリストファーは、セシリアの方が良いときっと思っている…………


 そう思うと、自分の不甲斐なさに、やるせなく悲しみに打ちひしがれて何度も涙で枕を濡らした。


 セシリアさえいなければ……と何度思ったかしれない。


 クリストファーの想いを独り占めしているセシリアへの憎悪がただの嫉妬だと分かっていても、止められなくなっていたのだ。


 セシリアが婚約者のシモンに裏切られた時は、ざまあみろとスッキリした。

 これで少しは公平になると思っていたのに、いつの間にかジリアン王子に取り入って、今度は王妃になるですって……⁈


 おかしいわよ、何かが間違っている――何故セシリアだけいつもスポットライトが当たるの⁉


「私一人を悪者にしようとしても、そうはいかないわよ。セシリアにした嫌がらせは私がこれをしろと細かく指示した訳じゃ無い、アンジェリカが自発的にしていたんでしょう?ルイーゼだって、綺麗なドレスが着られるって喜んでいたわよね。あわよくばどこかの貴族の子息に見初められるかもって浮かれていたじゃない。いい子ぶっているのは貴方達だわ。あれだけ嫌がらせして来たくせに、今更セシリアの味方気取りなんて虫が良いにも程があるでしょ⁈」


 痛い所を突かれたアンジェリカとルイーゼが言葉に詰まる。

 

 確かに、セシリアには様々な嫌がらせを繰り返して来たのは事実だ。――だが、子供だったから未熟で見えていない事が多くあった――それはここ数カ月で一気に見えて来た事だ。


「――エウノミア、貴方、自分の家が没落していく様子を見て何か考えたりしなかったの?セシリアを偽善だと罵っていた自分が、彼女が関わる救済策で生き長らえたの。両親が正妃様やセシリアに感謝しているのを見て、セシリアは偽善者だと嘲笑えたかしら?――分かってないのは自分の方だったのよ。不自由ない暮らしをして碌に困った事が無い私が思い上がっていた」


 アンジェリカは苦い顔で言った。


「偉そうな口を叩いていたくせに、私は没落していく家に対して何もできなかったわ――ううん、色々と頑張っても転がり落ちるのを止められなかった。セシリアが正妃様と共に動いてくれたから、暴動に巻き込まれなかったし食料も確保できたのよ」


 まさか貴族の自分が飢える事など無いと思っていたアンジェリカだったが、数人の使用人が食料を持って逃走したり、銀食器を持ち逃げしたりと屋敷内で事件が続いた。

 使用人達の方が貧困が激しかったから、屋敷内ですらどんどん治安が悪くなっていくのを黙って見ているしかなかった。


 

 


 

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