追憶~クリストファー・ラザルス 2
優雅な見掛けの裏で足の引っ張り合いが激しく、油断が出来ない。
――しかし、近寄って来ていた女子達が膝の血に気付いていなかったのには苦笑する。
彼女達の目には僕の顔しか映っていないんだろうなと、皮肉に思ってしまった。
集まって来る女子達の関心が、クリストファーの身分と容姿にしかないのは自覚している。
もしくは、優秀な男子というカテゴリーか。
夢見がちな子などは童話の王子様みたいと口にしてくるので、クリストファーはお伽話に出て来る王子様の様な位置付けをされているのかもしれない。
自分でも子供らしくないと思うが、正直、彼女たちの表面的な関心には呆れていた。
お伽話に出て来る様な王子の華やかな面しか見ていない。
王子と身分の垣根を越えて結婚だなど、まずあり得ない。
愛があれば何でも許容されると思うのは現実が見れていない証拠だ。
後継者が生まれなければ愛があったところで立場は針の筵に置かれるし、王妃ともなれば負う責務は重く、失敗は許されぬ。
それも分からない令嬢達が外見だけ蝶の様に着飾り、中身を磨く事無くおろそかにしているのは滑稽ですらあった。
優しいと言われるが、クリストファーは社交辞令を体現しているだけで、内心はかなりいい性格をしていて辛辣だと思う。優しいどころか毒舌だ。それも見破れない令嬢達に興味は無い。
――だが、セシリアだけは他の令嬢達と違う気がしており、彼女からハンカチを差し出されたクリストファーはドキリと鼓動が強く跳ねるのを感じた。
「あ、有難う」
礼を言って彼女を見返すと、セシリアがじっとクリストファーの膝の傷に視線を注いでいる。
余りに熱心に見られているのでたじろぐと、セシリアは眉を顰めて言った。
「……これは鞭の跡じゃないかしら?もしかして、誰かに当てられたのではありませんか?」
言い当てたセシリアにクリストファーは目を丸くし、誰にも黙っていようと思っていたはずが、驚いて「よく分かったね⁈」と、つい口を滑らせてしまった。
傷を見て、鞭の跡だと即座に分かる人間は珍しいのではないか?
「よくある事ですから。貴族の子は手段を選ばず足の引っ張り合いをしてきます。身分が低ければ尚更容赦ありません。もう慣れましたわ」
平然と言うセシリアから、うんざりしている空気が伝わってくる。
泣くでもなく怒るでもなく呆れた様子は、同年代の子供とは一線を画した大人びた精神を感じさせるものだった。
「……と言う事は、君も鞭で打たれた事があると言う事ですか?」
少なくともクリストファーはそういった現場に遭遇したことは無かったが、裏では日常茶飯事と言う事か?
質問すると、セシリアは「私は数回ですが、回数は身分の低さと比例する様ですね」とあっさり認めた。
「そんな……!次そんな目に逢ったら、僕に言って下さい。絶対にそんな事は止めさせるから!」
女の子に何て残酷な事を!と血相を変えたクリストファーに、セシリアは「有難うございます」と、儀礼的に返した。
「子息たちが全員貴方みたいな考えだと良いのですが、虐められている全員を助けるのは難しいと思います」
クリストファーが助けようとしたのはセシリアなのだが、セシリアはクリストファーが正義感で発言したと捉えた様だ。
そう言われて、いつもの自分らしくない発言だったとハッとする。
常に侯爵家の嫡男としての考えが染みついている自分が、感情的になるなんてと自分でも意外に思う。
*ご覧いただき有難うございます。
度々申し訳ありません、こちら少々加筆させて頂きました。
投稿が遅れて申し訳ありません<(_ _)>
お詫びもかねて今日はクリスマスイブと言う事で、おすすめの曲をご紹介致します*
リンジースターリング:キャロル オブ ジ ベル (バイオリン曲です)
バックストリートボーイズ:ラスト クリスマス
テイラースイフト:スノウ グローブ ハート (MVが綺麗ですよ*)




