迎春の里帰り
今回紡がれる物語は、大切な故郷で年の夜を過ごす猫たちのお話
私がこの猫谷に来てから数ヶ月が経っていた。
ここに来てから毎日、爺さん猫の所に訪れてはここで育った猫たちの話を聞いて過ごしている。今の生活は人間だったころに比べてとても充実した毎日を送っている。
そんな中でこの世界でも年末や年明けがあることを爺さん猫から教えてもらった。
聞くところによると、よく聞かせてもらっている猫たちがここに帰ってきて数日のんびりする期間でもあるらしい。
私はその話を聞いてから街を練り歩いて色々な子たちの話を聞いて回った…。
―森の魔女様
僕は魔女様と一緒に故郷である猫谷に戻ってきている。僕たちは爺さん猫に挨拶をしに行く為に街中を歩いていた。
「ねぇ、メラン!あれ何?
どんな魔法なの??」
魔女様は目を輝かせて僕に質問してきた。僕は呆れながら魔女様の質問に答え、目的地へと向かって歩いた。以前と街中があまり変わっていなくて安心している。
変わった所と言えば、ここに住んでいた時よりも活気が溢れている気がする。
「ほら、魔女様
爺さんが待ってるから早くいくよ~」
―幸せのお裾分け
久しぶりに故郷に戻ってこれてルンルンな気分である。
両親も元気そうだったし、猫団子で世話してやってる子分たちにお土産を渡す為に街中へと出向いている。ママに聞いた所、兄弟猫が街でごはん屋を営んでいるらしい。
また、頼めば手土産用の物も作ってくれるし人も食べるのも作ってくれる。
子分たちに渡せもするし兄弟猫のお店にも貢献出来ると思い、あたしはごはん屋に向かって軽い足取りで歩く。
―聖火は灯され
私はこの時期が嫌いだ。主を探さなければ行けないのに毎年、ここに戻らなければならないのだから。昔、気が付けば知らない広間にいて爺さん猫が目の前にいた。
「お主は主を探しているらしいな。どれ、わしが力を授けてやろう」
そう爺さん猫が言った後、目を覚ますと私は知らない広間から元居た場所に戻っていた。それから妖を倒せる力を手に入れて、喋る様になっていた。この時期は嫌いだが力をくれた爺さん猫には感謝をしている。
「早く挨拶をして、主を探さなければ」
そう呟いて主に貰った紅白の七五三縄をそっと触った。
―空は黒く染まった
あの時以来、こんなにはっきりした夢をみるのは久しぶりな気がする。
色々な猫がいる。立っている猫や尻尾が二つに裂けている猫。
愛猫と一緒に会いにいかないといけない方がいる気がする。毎年、この時期になると同じような夢を見ている気がする。内容は覚えていないけど、愛猫が案内してくれてその方に毎年会いに行ってる気がする。
愛猫がこっちを見てひと鳴きする。そろそろ到着するらしい。
ジリリリィィィィ
―終焉の影
ボク達は仕事の合間に故郷の猫谷に訪れている。故郷と言っても小さい頃の記憶はなく、あるのは目が覚めた時に爺さんがボクの前にいたことくらいだ。
ボクがフォンセと一緒に仕事をはじめ、ここに来るのは初めてだ。
「ナタ、どこに行くの?」
「ん~、ひとまず爺さんの所に行って挨拶に行こうかナ?」
ボク達はそんな他愛ない話をしながら、街を歩き爺さんのとこへと向かった。
久しぶりに仕事がないのだから故郷で少しのんびりとしようかナ。
―白いわた
ボクは友人に会うため、故郷に戻ってきた。ボクの仕事が落ち着いたころに電話がいっぽん入った。その友人はボクがあの館に過ごすきっかけになった大切な友人である。
そろそろ約束の場所に着く。こっちの仲間に挨拶をし、みんなの話を聞いてゆっくり過ごす。そして、ボクの昨年の一年間の出来事を話す。
「おっ、来た来た。お~い!こっちだ!!」
ボクはみんなの所に駆け寄った。久しぶりに会うがみんな変わっていない。
「ごめん、お待たせ。
あけましておめでとう。今年もよろしく。」