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幸せのお裾分け

今回紡がれるお話は、美味しいお団子屋さんの少し不思議な秘密のお話

ぽかぽかとした暖かい日差しを浴びながら、キョロキョロと辺りを見渡す。やっととれた

休日をつかい向かうのは、先月できたというお団子屋さんだ。何回もスマホで道を確認しながら進んで来たから、迷子にはならなかった。道を曲がると目的の看板が見えた。

ホッと一息をつくと、強張っていた肩の力が抜けた。

和風造りの外観であり、暖簾には〝猫団子〟と書かれていた。外で食べるように置かれた

縁台の上に一匹の三毛猫が丸くなりながら眠っていた。その様子を周りの人たちはニコニコと見守っている。

この子がチラシやブログに載っていた看板猫のキャリーちゃんだろう。

何人かは並んでいる人はいるがそこまで多くは無い、これはいいタイミングで来れたので

はないかと、少し気分が上がった。順番待ちの紙に名前を書き、並んでいる人たちの最後尾へと向かう。

ぽかぽかの日差しは眠気を誘うには十分であり、キャリーちゃんが寝てしまうのもなんと

なくだが分かる気がする。

何人か中に入り、列が進んだ頃にキャリーちゃんが目を覚ました。クワっと大きく欠伸をした後、毛繕いを始めた。その様子もみんな見入っていた。

キャリーちゃんを見ていたらあっという間に自分の番になった。名前を呼ばれ店に入る

時、キャリーちゃんも一緒に店に入っていく。店員さんに案内され席に着き、テーブルの端にあったメニューを手に取る。

メニューを開くと所々にキャリーちゃんのイラストと一緒に『看板猫もおすすめニャ!』

と書いてあり、微笑ましくなる。

どうせなら、『看板猫のおすすめニャ!』と書いてある草団子を注文する。少しした後、

届いた草団子には肉球のマークが付いていた。


「美味しい…」


つい零れてしまった。もちもちと柔らかいよもぎ餅の感触と、中に入っているあんこの味

があっていて今までで一番おいしいお団子だ。確かにおすすめになる商品だろう。


「家の子にも食べさせてあげたいな」


頭に浮かんできたのは家で待っている愛猫だ。

こんなに美味しいものを一人で食べていることに少し罪悪感を覚えた。メニューの中をみると、どうやら猫も食べられるお団子が売っているのを見つけた。

これならと思ったが、この後も回りたい所がある。最近、暖かくなってきているから持ち歩くとなると少し不安だ。今回は諦めるしか無い。

食べ終わり、伝票を持ってレジに向かう。財布から小銭を取り出すと、パシリと猫の足が伸びてきて持っていた五百円玉が床に叩き落とされる。驚いていると犯行を行ったキャリーちゃんが落ちた五百円玉をパシパシと飛ばしながら何処かへ行ってしまった。

店員さんがすみませんと頭を下げる、そんな店員さんに大丈夫だと笑いながら言う。取られたのが五百円玉なのは少し痛いが、愛猫のイタズラで慣れていた。会計を済ませて店を出る。出る直前、キャリーちゃんがこちらを見て鳴いた気がした。

家に着いたのは外が暗くなってからだった。疲れた身体で玄関を開ける、すると、リビンし体を捻るので、床に近づけてから解放してあげた。


「今日は、美味しいお団子屋さんに行ったんだ

猫も食べられるお団子もあったから今度買ってくるね」


それに答えるかのように鳴いた。捕まえて顔を近づけようとしたら今度は逃げられてしま

った。一日歩いて疲れたので、猫のトイレ掃除や夜のご飯をあげ、ベッドへ行った途端に意識が途切れた。

真夜中にカリカリと音がする。その音で目が覚め、寝ぼけ眼で、音のする方へと向かう。

その音は、窓の外から聞こえていたのだ。愛猫が散歩から帰って来たのかと思い、窓の鍵を開け、窓を開ける。入ってきたのを寝ぼけながら確認し、ベッドに戻った。

もう一度眠ろうとし、布団に入ると


「商品をお届けに参りました」


眠りに入る一歩手前でそんな声が聞こえた。ガタンと聞こえる方に目を向けると窓から三

色の何かが出ていったような気がした。

朝、目が覚めると昨日買った袋がいくつか倒れていた。その近くで愛猫が毛繕いをしてい

たから、倒されちゃったかと思ったが、置きっぱなしだった自分が悪いと反省する。だが、半分罰半分八つ当たりのつもりで、愛猫を抱き上げ、顔をスリスリと擦り付けた。すると、猫パンチがとんできた。一発食らったところで解放してあげる。

倒れた袋を立て直し、中身を戻していく。

ふとその中に買った覚えのない箱を見つけた。商品説明をみると、猫も食べられるお団子

と書かれていた。

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