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森の魔女さま

−今回紡がれる物語は、森に住んでいる噂の人と黒猫のお話−

町外れに誰一人近寄らない深い森がある。その森の奥底に一つの家があった。

その家を覗くと薄暗い部屋の中に一人の女性がいた。

女性は分厚い本を持ちながら、部屋の中心にある大釜を覗き込んでいる。

その中身はほんのりと赤く輝いていた。


「次は…黒砂漠の砂を一つまみと…」


女性はそう呟くとガラスの小瓶に入った不思議な黒い砂を一つつまみ、大釜の中に入れる。

砂はサラサラと宙を回りながら大釜の中であっという間に溶けていった。


「そしてサラマンダーの爪を入れて…」


女性は瓶の中に何本か入っていた爪を取り出し、乳鉢で少し砕いてそれをまとめて大釜にいれる。

女性は本と大釜を交互に覗き込みながら次々と、不思議な材料を大釜の中に入れていく…

全てを入れ終え、かき混ぜると大釜の中身がだんだんと色が変化していった。

その様子を見て、女性は口角を上げた。


「やれやれ、また魔女様は新しい薬をつくっているのかい」


その声が聞こえた後に、扉がギィと音を立てながら開いていく。

扉から入ってきたのは、綺麗な青い瞳をした黒猫の姿がそこにはあった。

魔女様と呼ばれた女性は、上がった口角を隠さないまま返事を返す。


「だって、面白いんだもん」

「メラン、いつものよろしく」


「はぁ…」


メランと呼ばれた黒猫は一つため息をつくと素早く大釜に近づいた。

そして、大釜に前足を向け、瞼を閉じた。するとメランは青白い光に包まれる。

魔女様は、それを横目で確認し、長い棒で大釜の中身をまたかき混ぜ始める、すると、大釜を中心に魔方陣が展開され、大釜の中身が少しずつ変化していった。


「それに…」


大釜の中身がキラキラと輝きだし、色がだんだんと黄緑色に染まりだした。


「キラキラって輝いている魔法薬を見るのすっごく好きなんだもん」


魔女様は大釜の中を覗き込んだ後、片手に持っていた本を置き、棚から空の小瓶が入った箱を運びだした。出来た魔法薬をゆっくりと小瓶に詰めていき、蓋をし、紐を結んだ。残りの魔法薬も同じように詰めていく…。

ある程度詰め終えたら、一つ小瓶を取り出し、小瓶の中でキラキラと輝いている魔法薬を見て、軽く小瓶を揺らす。

小瓶の中で魔法薬はチャプチャプと音を鳴らし、更にキラキラと輝きだした。

小瓶を覗き込んでいる瞳は、音を立てて揺れている魔法薬と同じぐらいにキラキラと輝いて見える。


「本当にすきだよね、それ…」


目を輝かせて、完成した魔法薬を見ている魔女様を眺めながらメランは呟いた。


「……あっ…」


けれど、メランは本来の目的を思い出して、魔女様の手から魔法薬を取り上げた。

魔女様は取り上げられたからか不機嫌そうにメランを眺めていた。箱にしまった後にメランは笑顔で魔女様に伝える…


「今日はお客様がいらっしゃる日だよ」


その言葉で魔女様も思い出したらしく、大人しく小瓶が並んだ箱に蓋をする。

メランは箱にポムっと肉球を当てる。すると、箱はフワフワと宙に浮いた。

浮いたことを確認した後、メランは魔女様の肩に跳び乗った。


「この魔法薬はどこに置いておく?」


「うーん…。よし、倉庫の二番目の棚に置いておいて」


魔女様は少し考えたのち、思いついたように人差し指を立てて言う。

その言葉を聞き、メランは魔女様の肩から箱に跳び乗り、片手をあげ、箱に肉球をポフっと当てる、すると、箱は青白い光を放ちながら消える。

メランは足場がなくなりそのまま床に着地する。


「それじゃあ向かおっか」


魔女様は満足したようにメランに笑いかける。メランは魔女様の顔を見ながら、ため息を一つつき再び肩に跳び乗る。


「魔法薬作りに夢中になるのはいいけど、噂の森の魔女様が約束も守れないなんて言われないようにしてよね」


メランは咎めるように少し睨みながら魔女様に言う。

魔法薬作り以外には基本的に興味がない魔女様を支えているのがメランであり、それが役目だと思っているからの言葉でもあるが、大好きな魔女様が悪く言われるのは嫌だという気持ちがあるのは魔女様には秘密である。


「そんな事言われてもなぁ…、周りが勝手に言ってるだけだし…」


呆れたようにため息交じりに言う


「ほんと、魔法が使えないのに魔女様なんてちゃんちゃらおかしいよねぇ」


扉の横に置いてある、ランプの火を消しながら笑い交じりに言う。


「ホントに魔法が使えるのはメランの方なのにねぇ」


扉がバタンと音を立てながら閉まると、部屋が闇に飲み込まれる…

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