第2話
今回は“陸くん”の『ひととなり』が書けたらいいなあと思います(^_-)-☆
今回は陸くん視点で、第1話より少し前のお話となります。
。。。。。。
「本当にごめんね」
そう言いながら涙ぐむ姉ちゃんを見てオレの胸は深く痛む。
いつも明るく気丈な姉ちゃんの涙を見たのは……母さんのお葬式以来だ。
「オレは、どうって事ないよ! それよりも姉ちゃんの涙を見るのが辛い!!」
そう言うと、姉ちゃんは更に鼻をグシュグシュさせて手で顔を覆った。
「姉ちゃんと一緒に“プライベートイベント”に参加する為にブティックホテルに居ただけで、やましい事なんかこれぽっちも無いんだから!!」
「そうよね……でも『姉にファッションホテルに連れ込まれて女装させられた』なんて、傍から見ればいかがわしい以外の何物でもないよね!」
そんな事を口にする姉ちゃんにオレは思わず声が大きくなる。
「ダメだよ!! そんな自分を卑下する様な事を言っちゃ!! 姉ちゃんが中学生の頃からずっと作り続けて来た衣装に……評価される機会がやっと訪れて……『オレが役に立てるんなら』と引き受けたんだから!!」
姉ちゃんは指で涙を払って微笑んで見せた。
「そうだね!180cm越えの女の子なんて滅多に居ないものね……陸が演った『サフィルスター』は本当に圧巻だった!!」
姉ちゃんはスマホをタップして……
姉ちゃんの憧れのレイヤーさんとの『美少女戦士リボンスターズ』の“併せ”の写真を呼び出した。
「詩音さんも私も背が高い方だから……『リボンスターズ』の“併せ”はなかなか出来なかったのよ」
オレはスマホを覗き込む。
「やっぱりお姉ちゃんの『デザートムーン』が一番可愛い!!」
「バカッ!」とオレのお尻を叩く姉ちゃんに、オレはホッとした。
良かった!! “いつもの姉ちゃん”が戻って来た!!
「でも驚いたよ! オレにも付けられる、サポートインナー……だっけ? あるんだなって!!」
「そうね! 女の子が男装する時には、まったく逆の“胸つぶし”もあるんだよ! でも本当に本当に感謝してる! 衣装づくりの時から、陸は何度もサポートインナーを付けてくれたんだもの だから……」
話がまた湿っぽくなりそうだったのでオレは慌てて言葉を継ぐ。
「姉ちゃんの作品が“有名レイヤー”の詩音さんに評価された事がなにより嬉しいよ!! オレの方は二年生になったらクラスも変わるし落ち着くよ」
「でも、バスケが……」
「ああ……謹慎の事? そもそもブティックホテルの部屋から出て来たオレと姉ちゃんを写真に撮って匿名で裏サイトへ流したヤツも、ホテルを利用していたって事だろ?自分は身バレしたくないけど人の事はディすりたいなんて最低だし、裏サイト情報を鵜吞みにする教師もおかしい!! そんな奴が顧問の部活も、どうなんだろうって思ってしまうよ……」
「あそこは敷地内に“海”があるファッションホテルだから人気があるらしいのよ。それこそ“コスイベ”に使われるくらいなんだから……“本来の目的”で利用したいっていうJKやDKが居てもおかしくはないよね……私自身はファッションホテルへ行ったの初めてだったから、そこまで考えが及ばなかったのがいけないよね……」
姉ちゃんの思わぬ“告白”にオレは内心ドギマギした。
「あ! オレだってもちろん!行った事なかったよ! だからオレが『南高の女の子を妊娠させた』ってのも全くのデマだからね!!」
「そんなの分かってるわよ! もし陸に『好きな子』が居たとしても、女の子を泣かせる様な事、するはずないもん!」
「好きな子なんて居ないよ!」
「ほんとかなあ~ 告白されまくってるんじゃないの??」
と姉ちゃんから聞かれて
「まあ、そういう事は無くはなかったけど……姉ちゃんみたいに綺麗で性格も素敵な子はいないから……」
と正直に答えたら、ため息をつかれた。
「言われた私は悪い気はしないけど……それ“シスコン”だよ! ダメだね私は……もう少し弟と距離を取らなきゃ!」
.
「オレは事実を言ってるだけだよ! 姉ちゃんの自己評価が不当に低いだけ! それが証拠に!!姉ちゃんの“コス”、“いいね”が7Kとかつくじゃん!」
オレの反論に姉ちゃんは「あのねえ~!」と言い返しそうになったのをふと止め、悪戯っぽくニヤリ!とした。
「そうそう!一昨日のイベントで仲良くなったコがいてさ!」
「レイヤーさん?」
「ううん! “シエルのファンミーティング”で知り合ったの! でもモデルみたいなコ! 背が高くって、手足もスラッ!としててさ! 聞いたら家が近くらしいから、次のサンシャインのあこすたに誘った! いつもみたいに陸も来るでしょ?」
「そのつもりだけど……」
「その子ね、陸の『サフィルスター』に♡!で…… 一緒に写っていた私の事に気付いたみたいだよ! どうする?」
「どうするって! 『サフィルスター』のレイヤーは弟って言ったの?」
「そんな夢壊す様な事、言う訳無いじゃん!」
「ひょっとして“オトコ”って知らないの?」
「うん!」
「じゃあオレ、コスの準備手伝ったら離れていた方がいいかな?」
「それじゃ意味ないじゃん!」
「夢壊すのダメなんだろ?」
「黙ってれば分かんないわよ! それより、その子をコスに誘ってやって欲しいのよ! 陸のイケメン力で!」
「いや、そんなもん無いし……『今泣いたカラスが笑った』みたいな事、言わないでよ!」
「え~!! やってくれないのなら、姉ちゃん、また泣くよ!」
「ああ分かったから!! それは止めて!!」
何だかニヤニヤと企んでいる姉ちゃんにオレは肩を竦めたけど……姉ちゃんの泣き顔よりニヤニヤ顔の方がずっといいから! オレは姉ちゃんの“企み”に乗っかろうと思う。
つづく
。。。。。。
イラストです!
本日は未登場の七海ちゃん
シスコン男子はお好きですか??
私はお付き合いしたことが無いので正直『?』ですが、女の子には優しいのかな?
それとも自分の姉(もしくは妹)と比べられて評価が辛い( 一一)のかな??
ご感想、レビュー、ブクマ、ご評価、いいね 切に切にお待ちしています!!