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プロローグ ~俺がアイツらと出会うまで~

 ボクシングとは、男と男の、武器一つない拳のぶつかり合いである。


 ボクシングとは、相手との戦いである前に、己との戦いである。


 ボクシングとは――





「今日、丸山女子高の子たちと遊びまーーーす!」


「きましたぁぁぁぁッ! 神降臨!」


 教室の時計は、午後4時を指している。

 放課後になったが、教室はまだ喧騒としている。


「大橋! おい大橋!」

「ん、どうした、何の話だっけ?」


 耳元で苗字を叫ばれ、我に返る。

 ええと、丸山女子?


「何の話って……今日これから4対4で丸山女子の子と遊ぶんだよ!朗報だろ?」

「ああ、そうか……」


 隣で唾を飛ばしながら言葉を捲し立てるピアスだらけのクラスメイトとは対照的に、俺は空気に溶け込みそうな声音で呟いた。


「おいおい、テンション低いな! お前で4人目なんだよ、来るだろ?」

「…………」


 はぁ。


 心の中で溜息をつく。

 高校に入学してまだ5日目。


 そんないきなり羽目を外すのもな。うん。


「行きます」

「おっしゃあああ出発!!!」

「大橋! 相楽高校の力みせつけようぜ」


 コンマ0.1秒で机に散らばった教科書をカバンに投げ入れた。


 脳内にゴングの音が鳴り響いた。


 ―――――――


 ―――――


 ――




「このあと、抜け出して2人で遊ぼうよ」

「え~? でもみんないるし」

「俺はサヤカちゃんとだけ話したいんだけどね。ずっと1番可愛いなって思ってた」

「やだぁなにそれ……うん、わかった……いいよ?」


 はいミッションクリア。


 隣に座っている金髪ギャルことサヤカちゃんの手を握った。


「おい次歌うの誰!? じゃあシュウタとレミちゃんデュエットね!」

「えー! やだし!」

「ひでぇ! 俺とじゃダメってことかよ!?」

「ギャハハハ!」


 大音量で流れる音楽、誰も周りは見えちゃいない。

 ドアに最も近い位置に座っていた俺は、彼女の手を引いて部屋を後にする。


 さてと、あとは家に連れて帰るだけだな。


「サヤカちゃん、カラオケ疲れたし、家でまったり映画みて落ち着こうよ」


 彼女はコクリ、と小さく頷いた。


 脳内を支配するアドレナリンを感じつつ、俺は微笑むと彼女の頭に手を置く。


「じゃ、いこっか」


高校に入学してまだ5日目。

俺は入学初日からこんな日々の繰り返しだった。


 特に不満はない、と思う。

 さすがにクソッタレだってことは自覚してるけど。


 人生、変わっちまったな――。

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