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 入り口のドアが叩き付けられるように開いた。パンプスの靴音も高らかに入ってきたのは、薄いグレーのパンツスーツを着た女性、すももたちを引率してきた聖心中の女教師だった。

「……そおっと入ってきてえや。開店前からドアこわされたらかなわんわ」

「なにか言った、テル?」

 じろりと睨まれたテルさんは、大きな身体を縮め、厨房へ退散した。

「白峰先生……」

「よかった……無事で」

 歩み寄ったすももの肩をさすり、安堵の息をつく女教師、白峰。……ん? 白峰って、たしかジャスティンの名字……。

「ええ、そうよ。一谷はじめ君」

 僕の表情で察したのだろう、白峰女史は僕に向かってうなずいた。

「私は白峰涼の……絶対正義ジャスティンの母親よ」

「そ、そうなんですか」

 展開が急すぎて、ついていくのがやっとだ。

「雄子。お前がついていて、すももを見失うとは。何をやってたんだ」

 責める口調の紺色スーツ男に、白峰女史が「なによ、りゅう。あなたこそ」と食ってかかった。持っていた無骨なビジネスバッグを床に投げ落とすと、その中へ両手を突っ込む。

「こんなのが、舘伝中あそこにいたのよ!」

 バッグから引きずり出されたのは、野球のボールぐらいの大きさの、真っ白な機械仕掛けのクモだった。ちょうど腹に当たる部分が陥没しており、壊れているようだ。

「ジャスパイダー……」

「ええ。涼のスパイマシン。こいつが待ち伏せしてたの。あなたこそ、自分の学校の敷地ぐらい、ちゃんと管理しなさいよね!」

「うむ。すまなかった。たしかに、私のミスだ。お前が、こんな単純な囮にひっかかるということを予想できなかったのだからな」

「なんですって!」

 紺スーツの皮肉に、白峰女史の眉が吊り上がる。

「しかし、すげえな、白峰。どうやってしとめたんだ?」

 空手マンが壊れたジャスパイダーを覗き込んで、言う。

「消火器よ。ぶっかけて、ぶっつけて、たたきつけて、けっとばしてやったの!」

「ほう、私がいざという時のため校舎に配置した消火器が君の役に立ったのなら、なによりだ」

「あんたって、どうしてそう皮肉ばっかり……!」

「お二人さん! 後生やさかい、喧嘩は外でやってえや」

 キッチンからテルさんの悲痛な叫び声が上がる。

「もう、いいかげんにしてっ!」

 すももが声を張り上げた。わなわなと震えている。

「はじめちゃんは、急にこんなとこ連れてこられて、不安なのっ! みんなとも初対面なのよ!? なのに、つまらないことで喧嘩ばっかりっ!」

 ……いや、ここに僕を連れてきたのは、君なんだけど?

「大人なんだから、ちゃんとして! ちゃんと、はじめちゃんに説明してあげてよっ!」

 すももの言葉で、大人たちは一様におとなしくなった。

「……すももの言う通りだ」

 紺スーツが落ち着いた口調で言う。

「すまなかった、一谷はじめ君。順を追って話そう。まず、我々は君の味方だ。君に危害を加えるつもりは一切ないから、安心してくれたまえ」

 これには四人全員が揃ってうなずく。さっきまで喧嘩していたのがウソのようだ。

「……みなさんは、なんなんですか?」

「我々は、超人戦隊スーパーファイブ」

「えっ……?」

「知ってるかい?」

 知ってるも何も、歴代最高視聴率をたたき出した伝説のヒーロー戦隊だ。懐かしのテレビ番組では必ず取り上げられる、今のヒーローシリーズの元祖。敵は宇宙からの侵略者ガイアース。ボスであるモーマ総統が生み出すモーマ獣(後半はハイパーモーマ獣)と戦った。すいぶん若い頃の話だろうけど、そう言われれば、なんとなく素顔に見覚えがあるかも……。

 僕の反応に、大人たちはちょっぴり嬉しそうに微笑んだ。

「私は青葉あおば りゅう。スーパーブルーだ」

 紺スーツ男が言う。

白峰しらみね 雄子ゆうこ。スーパーホワイトよ。よろしくね、はじめ君」

 白峰女史は微笑んだ。こうして見ると、目立たないが端正な顔立ちで、かなりの美人だ。涼は母親似なんだな。

「わしはスーパーイエローの黄土きど てるや。よろしゅうに」

 顔も見せず、キッチンから声を張り上げるテルさん。

「そして俺がリーダーのスーパーレッドこと赤道せきどう れつだ! 人呼んで、超人戦隊スーパーファイブ! まあ、今じゃ誰も呼ばんがな」

 最後に空手マンが言い、胸を張って大笑いした。……あれ?

「赤道って、もしかして……」

「おっ。気づいたか。初代リアライズ赤道 蓮は俺の息子だ」

「赤道先輩の……お父さん?」

「そうか。きみも舘伝中だったな。いや、心配させてすまん」

「先輩、大丈夫なんですか?」

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