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轟音をあげタイタニックバズーカから放たれた二つの白い稲妻が螺旋状に絡み合い一条の巨大光線となって、座ったままのすももを直撃する。
「すももっ!」
白い光の束に飲み込まれた、すもも。白光はその通過地点に存在した相馬タワーをも飲み込み、音もなく消滅させていく。
さらに爆風をともなって光が弾けると、視界がシーツをかぶせられたかのように真っ白になった。僕は地を這う風に吹き飛ばされそうになりながら、
「すもも……すももーっ!」
名を呼ぶが、返事はない。光線が残像となり、次第に薄れ、消えていくに伴って、視野が徐々に回復していく。
「ま、間に合った……」
そう呟き、立ち上がった巨大すももの姿が、そこにあった。その身にまとうのは、巨大な超可愛ラブリーアーマーだ。
「これ……すごい防御力。いつもΩフォームの後はすぐにレインボースラッシュで敵を倒してたから、効果が分からなかったけど……」
すももはフリルが少しだけ破れたラブリーアーマーをしげしげと見下ろし、言う。Ωフォーム唯一の防具。すもものお母さんが提案したビキニは、無敵の鎧だったんだ。母親が子供を思う気持ち、守りたいという気持ちは、何にも勝るということか。
「……ありがと、お母さん」
すももは呟き、顔を上げた。その表情は凛として明るく、目の前のジャスタイタンをまっすぐに見つめている。一方、
『ば、馬鹿な。ファイナルジャッジメントを浴びて、無傷だと?』
明らかに動揺しているジャスティン。
「今だ! たたみかけて!」
「わ、わかった!」
僕の指示で我に返ったすももが、ジャスティンへ突撃する。
「おいでっ! 超絶聖王剣エクスカリバー!」
再び手の中に現れた聖剣を、すももが一閃。
『くッ……!』
ジャスタイタンは下がって避けたが、その肩口から突き出ていたバズーカの砲身を斬り飛ばした。本体から切り離されたパーツが空中で爆発する。
「いいぞ、手を休めるな!」
「うんっ!」
すももは矢継ぎ早に剣を繰り出す。突き、薙ぎ、斬る。映画で見る一流の剣士のような、なめらかで鋭い動きは、自我を持つエクスカリバーの支援の賜物だ。対するジャスタイタンは、格闘用武器が実装前だったと見え、素手のまま防戦一方だ。聖剣の透明の刃はジャスタイタンの装甲を削り、穿ち、砕き、着実にダメージを与えていく。
「いけるぞ!」
ジャスティンのヒーロン完全直感はいまだに有効なのだろうが、それが生かされていない。なぜなら、巨大ロボはおおむね動きが鈍く、小回りが利かないからだ。そのぎこちなさは、あたかも人が箱をかぶっているかのようだと揶揄される。ジャスティンがいくら攻撃を予測できても、ロボットが反応できなければ意味がないのだ。
「たあっ!」
聖剣の切っ先がジャスタイタンの顔面に突き刺さる。飛び散る火花。
「よしっ!」
思わずガッツポーズ。頭部には外部を見るカメラが搭載されていることが多い。視野を奪えれば、もはや勝利は目前だ。
『調子に……乗るなあッ!』
ジャスティンが吠える。
『来いッ! ジャスイーグル!!』
そのかけ声とともに、ジャスタイタンは一気に後方へ跳躍した。巨大ロボにあるまじき、この唐突に機敏な動き、そしてその鳥の名前を冠した機体名は、もしや……。
案の定、遠くから聞こえてくるジェットエンジンの音。
「なになにっ?」
見上げたすももの頭上高くを、高速で飛び去っていく黄金の飛行機。機体の先端には鷲の顔、両翼には翼の装飾が施された、見たことのない形状だ。窓はないので、無人機らしい。あれがジャスイーグル……。
『合体!』
ジャスティンの掛け声で飛び上がったジャスタイタンの背後から、ジャスイーグルが密着、機体それぞれが変形し、パーツ同士を結合していく。翼は左右に大きく広がり、腕と足には装甲が追加され伸張、胸部、腰部分にも追加装甲が施され、まさに中世の重装歩兵を思わせる姿に変わる。最後に鷲の顔部分が兜となって頭部を覆うと、鋭い鷲の目に光が灯る。
『完成! グレートジャスタイタン!』
空中でポージングするグレートジャスタイタン。この展開はまずい。空からさっきクラスの光線を何発も射たれたら、さすがのラブリーアーマーも保たないだろう。
「すもも、空中で格闘戦に持ち込むんだ!」
「了解、飛風翼マッハウイング!」




