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「な、なんだ?」
まだ地面が揺れている。
『降臨! 絶対超神ジャスタイタン!』
かすかに聞こえるジャスティンの声。
「ジャスタイタン……もう、完成してたなんて」
すももは唇をかむ。
「ジャス……タイタン?」
「うん。ジャスティンが搭乗して操る巨大ロボ。ジャスティンの敵、邪魔帝国エビルダークが放つ魔物たち全てに巨大化装置が搭載されるっていう情報があって、その対策はとってあるって噂だったんだけど……」
再び轟音が響いた。今度は頭上からだ。
「このスーパー妄想ドームを力ずくで壊すつもりね」
「大丈夫だよ。これが僕の妄想壁と同じスペックなら……」
「ううん。これは所詮、あたしの想像上の産物だもの。はじめちゃんなら、もっと完璧に壊れないものを創り出せたんだろうけど……」
すももの厳しい表情が物語る通り、パラパラと天井から降ってくる細かい破片は、ドームがたとえ僅かずつであれ、確実に破損していることを意味している。
「長くは保たない?」
「うん。だけど外にはジャスタイタンが待ち構えてるわ。それに対抗できるようなロボットを現実化できればいいんだけど」
「ロボットなら、リアル系とスーパー系があるよね。そうだ。スーパー系の攻撃なら、ジャスティンには有効だろうし……」
「だめ。あたし、そういう男の子っぽいマシンものが一番苦手なの。全然イメージわかないわ」
「じっくり考える時間も、しっかり伝える余裕もない……か」
となると、だ。
「なら、方法はただ一つだ」
「……なに?」
「変身ヒーローの巨大ロボが戦う相手と言えば、当然、あれだよ」
僕は自信満々に言った。
爆音をあげ、砕け散るスーパー妄想ドーム。その破片は地面に落ちる前に燃え滓のように空に舞い上がりながら消滅していく。
『な、なんだ?』
ジャスティンの驚きの声。のろのろと後退する巨大ロボジャスタイタンの前に、ゆっくりと立ち上がる巨大な影。
「参上っ! ウルトラリアライズっ!」
陽光を全身に浴びたすももが、ジャスタイタンに負けずとも劣らないその巨躯で、いつものポーズを決める。白日の下に晒される、その勇姿。
「……いっ?」
すももの目がまん丸く見開かれ、自身の巨大化したボディを見下ろす。
「いやゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ」
巨大すももは、一糸まとわぬあられもない姿、ようするに、すっぽんぽんだった。
「な、なんで? なんでっ?」
あわてふためいた巨大すももは、手足をたたんで体を丸め、座り込んだ。
「そ、そうか。変身しないで巨大化したから、服が破れてしまったんだ。服は現実化で創り出されたものじゃない、普通の生地だから……」
「そ、そういうことは、もっと早く気づいてよおおお」
涙目で訴えるすもも。僕も今更ながら目のやり場に困る。どこを見ても全部、肌色。その全てが、すももの裸身なのだ。
『なんたる破廉恥!』
さすがにジャスティンも戸惑っている。そりゃそうだろう。ヒーローと言えど、男だ。若い娘の巨大な裸体を見せられて、目のやり場に困って手出しできまい……かと思いきや、ジャスティンはただ激昂した。
『そのような醜態、見るに耐えん! 塵と化してくれる!』
ジャスタイタンの背中のパーツが変形、一対の巨大バズーカとなってその両肩に装着される。な、なんだ、あいつ。全く動揺しないなんて、まさか、異性に興味がないタイプなのか?
『タイタニックバズーカ、エネルギー充填!』
砲口にエネルギーが集まっていく。これはやばそうだ。必殺技っぽい。
「よけろ、すももっ!」
僕は叫んだ。しかし、すももは泣きそうになりながら頭を振る。
「こんなんじゃ動けないよおっ」
「なんでもいいから、服を現実化するんだ!」
「あっ、そ、そうか。そうだね。えっと、えっと……」
「なんでもいいから、早く!」
「だ、だって、そんなこと急に言われたって」
「は、早くしないと……」
『ファイナルジャッジメントッ!』




