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「な、なんのつもり、はじめちゃんっ?」

「僕がすぐ後ろにいれば、君はきっと、僕を守ろうとして、すごい力を発揮するはずだ。君の、守りたいっていう欲望をもっともっと引き出せれば、ジャスティンを倒す力が得られるかもしれない!」

「そんなのダメよっ。危険すぎるわっ!」

「ジャスティンはさっき、はっきりと、僕の存在を許さないって言った。今ここで倒さなきゃ、僕はいずれやられてしまう! 僕を守りたいって思ってくれるなら、やるんだ!」

「でも……でもでもっ!」

「だいじょぶ。僕は君を信じてる。一緒に戦おう! さあ、集中して!」

「う……うんっ。やってみるっ!」

 精神を集中させるため目を閉じたすももは、座った僕の前で両手を広げる。破れたスカートが風になびき、ハート模様の桃色パンツを露にする。見たいくせに、見える範囲が広がるほど、見たい気持ちが萎えていくのは、何とも不思議な男の心理……

「ふおおおおおりゃああッ!」

 ジャスティンが雄叫びをあげ、遂に戒めから逃れ出た。すさまじい熱を放出していた甲冑も、元の色に戻っている。そ、そうだ。余計なことを考えてる場合じゃない。

「ふッ……ふうッ……。ど、どうだ? きれいさっぱり蒸発させてやったぞ……」

 明らかに息のあがっているジャスティン。灼熱化はかなりの体力を消費するようだ。

「その妙ちくりんな攻撃は理解した。二度とこの身に当たりはせんッ!」

 大剣を突きの形に構え直すジャスティン。

「私の奥義で片を付けてやる、とおッ!」

 天高く跳躍したジャスティンが、剣先を突き出しながら宙空を蹴りつける。

「マーシレスジャベリンッ!!」

 白銀の巨大な長槍と化したジャスティンが、空を切り裂き、僕たちに向かってくる。

「来たぞっ!」

 僕の言葉に反応したすももは、かっと目を見開いた。そして、

「スーパー妄想ドームっ!!」

 すももが言った瞬間、あたりは真っ暗闇に包まれた。な、なんだ、なにが起こった? 僕はあのまま、死んだのか?

「懐中電灯を……現実化リアライズ!」

 すももの声。かちり、とスイッチのスライド音がして、暗闇にぼんやりと光が灯る。

「はじめちゃんっ!」

 電灯の光を向けてくるすもも。

「ど、どうなったんだ?」

「……わかんない。はじめちゃんを守るにはどうしたらいいかって考えてたら、はじめちゃんがあたしを守るときに見せてくれた能力を思い出して……」

「ちょっと貸して」

 僕はすももに懐中電灯を借り、周囲を照らしてみた。のっぺりとした黒い壁が、ドーム状に僕らを覆っているようだ。草野球でもできそうなぐらいのサイズ。

『でてこいッ、卑怯ものッ!』

 外でジャスティンが叫んでいるのが、かすかに聞こえる。

「出てこいって言ってるけど、どうしよっか?」

「しばらく、ここにいよう。その間に、何かジャスティンを倒す策を考えるんだ。僕の妄想壁をイメージして作られたものなら、それなりに耐久性はあるはずだ」

「うん! あの時のはじめちゃん、すごかったもん。急に動かなくなったと思ったら、あとはジャンボやヒネオになにをされてもびくともしなくって。最後にはジャンボの指は折れるし、ヒネオの爪ははがれるしで、二人とも泣いちゃったんだから」

「知らなかった……」

「ずっと、あたしをぎゅって抱きしめて、守ってくれたんだよ」

「へ、へえ……」

「嬉しかったなあ。ほんとはね、もっと早く会いたかったんだけど、ほら、登録者同士は接触が管理されるじゃない? あの一件があったから、あたしとはじめちゃん、ほんとは大人になるまでは会えないはずだったんだ。だけど、あたしが兄さんの代わりにヒーローをやるなら、番組が終了したら会ってもいいって偉い人が言ってくれたから、あたし、怖いけど頑張ってきたの。そして、こうやって会うことができたんだよ」

「すももは、もう、あの頃のすずのすけじゃないんだね」

「うん。はじめちゃんのおかげで、あたし、変われたの。何かを守るためには、立ち向かう勇気が必要だって分かったの」

「そうか……」

「……こうやって、はじめちゃんと二人っきりになれて、超ハッピーなんだから。さっきから心臓ばっくばくだよ」

 そりゃ僕だって願ってもないシチュエーションだけど……急にこんなことになるなんて、想定外すぎる。

「はじめちゃんは、あたしのこと……きらい?」

 暗くて表情はよく見えないが、その声で、震えているのが分かる。

「えっ? そ、そそ、そんなことないよ。むしろ……」

 言いかけたが、轟音がすべてをかき消した。なにかとてつもなく巨大なものが落下した音。足下からの衝撃で体が浮き、地面に倒れ込む。


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