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「私は無様に落ちたりなどせん! なぜなら私は、絶対正義ジャスティンだからだッ!」

「はいはい、分かったからっ。さっさとその女を解放して、あなたも降りてきなさい! 今日はクリームシチューにするから。かりかりベーコンを後乗せにして……」

「かりかりベーコンなど、どうでもいい!」

「じゃあ、一緒に煮込んでもいいって言うのね? 助かるわ。ひと手間かかって超面倒くさいんだから!」

「愚かな! 一緒に煮るなど言語道断。たとえベーコンの旨味が汁に溶け出すメリットがあろうとも、あの独特の食感を犠牲にはできんッ!」

 これって、ただの親子喧嘩だよね。目が点になっていると、ぽん、と肩を叩かれた。

「なにをボーッとしている?」

 青葉理事長が不審そうに僕を見ている。

「雄子がジャスティンの気を引いているうちに、行くぞ」

 赤道さんが僕に親指を立て、白い歯を見せて笑った。そ、そうか。あれも作戦のうちなんだ。赤道さん、青葉理事長に続き、

「さあて、いっちょやったろかい!」

 思いの丈を吐き出してすっきりしたのか、妙にハイテンションなテルさんがはしごを上る。僕もその後に続いた。三人は慣れたふうに足音を殺し、柱に縛りつけられている桃ノ内さんの方へ滑るように歩み寄っていく。そんな技能を持ち合わせていない僕は、はしご上で待機しつつ、装備したインカムのマイクに、

『屋根に上がった。みんな、救出に向かってる』

 声を潜めて言うと、

『了解』

 すももの声がイヤホンから聞こえてきた。

「そもそも、クリームシチューというものはだなあッ……」

 シチューについてヒートアップして語るジャスティンの背後を通過し、三人はすももの母親……桃ノ内さんのところへ無事、たどり着いた。

「……さっさと連れて行け」

 縄を解こうとしていた三人が驚いて振り返る。ジャスティンは相変わらず眼下の白峰女史に視線を合わせたままだ、が、背後の三人の動きは把握していたらしい。

「涼、お前……俺たちに気付いてたのか?」

 赤道さんの言葉に、ジャスティンは「当然だ」と鼻を鳴らした。

「私は絶対正義ジャスティン。悪の足音は決して聞き逃さんッ!」

 振り返ったジャスティンが、背負っていた大剣を引き抜く。鋭い刀身が朝日できらめく。

「ま、待てっ!」

 慌てる赤道さんたちに、ジャスティンが大股で歩み寄っていく。

「まだか、流!」

 問われた青葉理事長は桃ノ内さんの縄を解こうと懸命だ。あんなに焦った顔、初めて見た。

「く……くそおおおっ!」

 意を決した赤道さんが地を蹴ってジャスティンに飛びかかる。ひと呼吸遅れて、テルさんもジャスティンの足元めがけてタックルに行く。突進してくる二人に向かって、ジャスティンは大剣をひと振りした。と、巻き起こったつむじ風が二人の大人を飲み込む。

「う、うわああっ!」

「ひえええっ」

 悲鳴を上げ、赤道さんとテルさんが僕の待機位置を越えて吹き飛ばされていく。剣風だけで、大の男二人を吹き飛ばすなんて……ほれぼれするほどヒーローっぽいヒーローだ。

「ヒーロンを失った貴様らが、この私に敵うものか」

 呟き、再び大剣を肩に担いだジャスティンが、桃ノ内さんと青葉理事長の元へ近づいていく。

「よ……よせ、涼……やめろおっ!」

 青葉理事長の叫びもむなしく、振るわれる大剣。その刃の切っ先が、桃ノ内さんを縛る縄を断ち切った。唖然と見上げる青葉理事長と桃ノ内さんを、ジャスティンは冷たく見下ろす。

「連れて行けと言っただろう。私は約束を守る。そちらが約束を守ったから……なッ!」

「ずおりゃああああっ!」

 頭上から舞い降りたリアライズ渾身のレインボースラッシュ!

「と、とめたっ!?」

 リアライズ最強の武器レインボーカリバー、あまたの悪を打ち破って来たその必殺の一撃を、ジャスティンは片手で掲げた大剣であっさりと受け止めた。

「……ぅううぉおおおおおおおおおおっ!」

 およそ少女らしからぬ雄叫びを上げたリアライズは、宙に浮いたまま翼を羽ばたかせ、レインボーカリバーを押し込む。が、しかし。

「笑止!」

 うるさい小バエでも払うかのようにジャスティンが大剣を振るう。小型竜巻のごとき剣風がリアライズを飲み込む。

「きゃあああっ!」

 空高く吹き飛ばされたリアライズは、そのまま落下し、展望台の屋根に背中から叩き付けられ、バウンドして半回転した。強いダメージを受けたせいか、Ωフォームが解除されてしまっている。まずい。このままじゃ空へ逃げることもできない。オリジナルのままでジャスティンと渡り合うなんて、自殺行為だ。

「すももっ! 聞こえてる?」

『う……うん……』


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