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 1万ボルトの営業車に乗った僕たちは、一路、相馬タワーを目指していた。

 背後からまっすぐ差し込んでくる日の光がまぶしい。運転席のテルさんも、助手席の青葉理事長も、後部座席前列の赤道さんも白峰女史も、みんな押し黙っている。僕とすももは最後列の後部座席だ。息苦しいほどの緊張感のなか、

「……ラブリーアーマーは、ね」

 ふと、すももが口を開いた。

「はじめちゃんは要らないって言ったけど、あれ、実はお母さんが考えてくれた装備なんだ。お母さん、あたしと一緒で想像力がなくてね。センスのかけらもない出来になっちゃったんだけど……でも、Ωフォームで唯一の防具なのよね」

「そうだったんだ……。ごめん。要らないとか言っちゃって」

「ううん。怒ってるわけじゃないのよ。ただ、はじめちゃんには知っておいてもらいたくて」

 すももは朗らかに笑う。

「それと……ごめんね、みんな。あたしのせいで、しっかり準備できないまま本番なんて」

 しょんぼりするすもも。へん、と鼻を鳴らしたのは、赤道さんだった。

「気にすんな。勝負はいつも、行き当たりばったりなもんだ。自分が完璧に準備できるまで、相手も大人しく待ってちゃくれねえからな。所詮、やるべき時に、やるしかねえんだよ」

「……うん」

 表情を強張らせたすももを見て、白峰女史の目が吊り上がる。

「どうして、あんたはいつもそう、デリカシーのないことを平気で……」

「まあ……だけど、よ」

 赤道さんは肩越しにちらりと振り返り、

「絶対に無理はするな。今回のお前の使命は、ジャスティンを倒すことじゃねえ。モモと一緒に、無事に俺たちのもとへ戻ってくることなんだからよ」

「……ありがと。お父さん」

 背後からシート越しに抱きつかれ、照れくさそうに首をかく赤道さん。

「ぼちぼち現場に着くで。みんな、覚悟はええか?」

 僕たちは揃ってうなずく。

 作戦は、こうだ。まずジャスティンの母親である白峰女史が相馬タワーの下から拡声器で説得する。ジャスティンの気を逸らしたところで、裏口から侵入した赤道さん、テルさん、青葉理事長がすもものお母さんを奪還。当然ジャスティンは襲いかかってくるだろうから、そこをリアライズが応戦する。僕は少し離れた場所からリアライズを妄想で支援、切りの良いところで僕を拾って飛び去る。ジャスティンは飛べないので、空へ逃れれば追ってはこられない。

 遠くに相馬タワーのシルエットが見えてきた。高さ二十メートルほどの展望塔。路面部分は改築中で、イタリアンレストランや最先端の雑貨店が並ぶおしゃれな町並みに生まれ変わるらしい。小学生の頃には何度か遠足や社会科見学で来たことがあるが、まさか、こんなことで行くことになるなんて。

 車は資材搬入口、白いテントが張られたところで停車した。白峰女史が降りる。

「幸運を」

 残ったメンバーにそう言い、白峰女史は拡声器を肩にかけ颯爽と歩み去っていく。

「モモの救出は、俺とテルだけで十分だ。ついていってやれよ」

 赤道さんが青葉理事長に言う。しかし、

「私もそう言った。しかし、彼女が断ったのだ。二人きりで涼と話したいとな」

 青葉理事長は苦い顔で言う。

「みんなうまいこと鞘に納まったみたいで、万々歳や」

 テルさんは妙に声を張って言った。

「スピード上げるでえっ!」

 テルさんはアクセル全開で相馬タワー本体へ向かう。

「は、はええよっ、テル! 無茶すんなっ!」

 背後で赤道さんが怒るが、速度は全く落ちない。

「おい、いい加減に……」

「うるさいわいっ!」

 青葉理事長が伸ばした手を、テルさんが振り払った。いつも温厚なテルさんにしては珍しい。

「わしかてなあ、ずっと、ずっと……雄子はんのことが好きやったんやあ!」

 テルさんは運転しながら大声を上げて、泣いた。


「ジャスティン!」

 拡声器を使った白峰女史に呼ばれて、振り返る絶対正義。灰色の空の下、その純白のマフラーが絶妙に風に踊る。なんとも言えない華がある。これが現役番組ヒーローのカリスマか。

「馬鹿なことはやめて、モモを……その女性を解放しなさい! 今すぐ!」

「……出たか。スーパーホワイト」

 呟くジャスティン。展望台の屋根へ通じる梯子が下りたままになっていたため、開けっ放しの昇降口から声が漏れ聞こえてくる。

「早く降りてきなさい!」

 白峰女史が叫ぶ。

「私は絶対正義ジャスティン。悪に加担する貴様の言葉など、聞く耳もたぬわッ」

 叫び返すジャスティン。負けじと白峰女史が、

「そんなところにいたら、危ないでしょっ!」

 言った。……へ?

「あなたは飛べないんだから……落っこちたらどうするの!」

 ……心配してるのって、そこ? お互いに顔を見合わせる僕らを他所に、二人の会話は白熱していく。

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