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「想像すること。この世の中に普通に存在しないものを想像するの、ほんっとに苦手で。実はね、Ωフォームだって、スーパーファイブのスーパーモードそのまんまなの。見たことがあるものとか、資料があれば、具体的に参考にできるから、復刻版のDVDとかを何回も見て、それぞれのメンバーの強化パーツをそのまま流用して現実化したの。そもそもリアライズの戦闘スーツだって、ほぼお兄ちゃんの色違いだし。現実化のヒーロンを持ってるくせに、自分が想像して創造したものが一つもないなんて、おかしいよね」
「おかしくはないと思うけど……不思議だね。本来、ヒーロンはその所有者の性格とか特性を誇張する形で現れるものだろ? 想像が苦手なのに、想像したものを創造できるヒーロンを持ってるなんてさ」
「あたしとお兄ちゃん、子供の頃からヒーロンが強すぎて、わけのわかんないものを、たくさんたくさん、とめどなく作り出し続けてたらしいの。だからお母さんたちは必死に、あたしたちが変なものを創造しないように……変なことを想像しないように、教育してくれて。おかげで、なんとか今は普通に暮らしていけるんだけど」
「それが徒になってるってわけか」
こくり、とうなずくすもも。
「だから、あなたを呼んだの。他でもない、あなたのヒーロンが妄想壁だから」
「僕の妄想壁なんかじゃ、ジャスティンの完全直感に対抗できない……僕に、もっと強いヒーロンがあれば……」
うなだれた僕の肩に、すももの柔らかい手が触れる。
「ううん。あたしが必要なのは強いヒーロンじゃない。はじめちゃんの妄想そのものが必要なの。はじめちゃんは、妄想でヒーロンを発動するほどの……妄想においては右に出るものがいないぐらいの、とんでもない妄想家なの。妄想界のプリンス、サラブレッドなんだから」
「……なんか、ほめられてる気がしないな」
「ほめてるもんっ!」
ぷう、と頬を膨らませるすもも。思わず笑ってしまう。
「はじめちゃんは、すっごい想像力があるのっ。妄想って言うから、変に聞こえるだけだもん! あたし、そんなはじめちゃんのことが、だい……」
怒ったまま言いかけて、はたと言葉を止めるすもも。
「僕のことが……なに?」
「だ、だいぶ尊敬してるもんっ!」
顔が真っ赤だ。泳いだ目が上目遣いに、ちら、と僕の顔色をうかがう。
「あーあ。三倍カレーなんか食べるからだよ」
僕が笑って指摘すると、なぜかすももは怒った顔になり、立ち上がった。そのまま無言で店を飛び出す。な、なんだ? なにが起こって、なんで怒った? 混乱していると、再び店のドアが開いた。
「さっきのは、どういう意味……」
聞きかけて、やめた。入ってきたのは青葉理事長だったのだ。
「順調かね?」
「ぜんぜん」
僕が自信たっぷりに頭を振ると、青葉理事長は苦笑した。
「あまり頭で考えすぎないことだ。思いのままを表現して、すももに伝えてやってくれればいい。それが叶った時、すももは……リアライズは、ジャスティンを倒せるだろう」
「……お願いですから、もっと具体的にやり方を指導してくださいよ」
「それは私にも分からない。君の妄想は君だけのものだからね」
「そんな、雲をつかむような話じゃ……」
「では、すもものヒーロンについて説明しよう。なにかのヒントになるかもしれない」
僕はうなずいた。
「現実化によって生み出されるものの力は、いかにそれをリアルにイメージできるか、そして、そこにどれだけの強い思いが込められるか、この二つに比例する。君がその妄想にかける思いが強いほど、そしてそれをすももが深く理解できればできるほど、リアライズは強くなれる」
イメージの具体性と、思いの強さが、力を決める、か。なんか分かったような、分からないような……。
とにかく、外も暗くなってきたことだし、そろそろ帰らないと。
「今日はこれぐらいにしておこう」
青葉理事長が僕の思いを見透かしたように言う。
「使ってない大型冷蔵庫に寝袋を用意してあるから、それを使ってくれたまえ」
「ここに泊まるんですか!?」
「当然だ。君はリアライズの最後の頼みの綱、切り札だ。万一にも失うわけにはいかない」
「ここに監禁されるってことですか?」
「そう言われるのは心外だが、否定はしない。ただ、君はすももといるところをジャスティンに見られてしまっている。当面、ここにいるのが、一番安全だろう。もちろん決めるのは君だ」
「とりあえず家に電話してもいいですか? しばらく帰らないなら、さすがに家族が心配すると思うんで……」
「残念だが、それも無理だ。我々の秘密仮設基地リアベースが、ここ、1万ボルト相馬店だとばれてしまうからな。君の家族も、何も知らない方がむしろ安全だよ。ジャスティンはあれでも正義の味方だ。一班市民である限り、君の家族に手出しはせん」
「……そう願いたいですね」




