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「うん。新しい装備を考えるのもいいけど、論理的に考えて即効性が一番高いのは、リアライズの装備の中で最強のもの、つまりΩフォームを強化することじゃないかと思うんだ」
「それで、それで?」
「現役ヒーローのジャスティンは、三倍強いんだろ? なら、こっちも三倍以上パワーアップすればいい」
「どうやるの?」
「紅蓮拳は炎の量を三倍にして攻撃力をアップ。聖水剣アクアカリバーは重さを三分の一にして攻撃速度を三倍に。轟雷爪は雷の量を三倍にして攻撃伝達範囲を拡大。飛風翼は翼の数を三倍にして、より高度からの攻撃を可能にするんだ」
「でも、それじゃあジャスティンには……」
「僕の計算では、四つの力の相乗効果で、リアライズの必殺技レインボースラッシュは、現在の三倍以上のダメージを与えられるはずだ」
「さっすが、はじめちゃんっ!」
リアライズは手を叩いてジャンプした。が、はたと何かに気付いた。
「はじめちゃん。あたし思うんだけど、一つ抜けてない?」
「なに?」
「超可愛ラブリーアーマー」
「あれは却下」
「えっ、なんで、なんで? 超カワイイのにっ!」
「飾りは後にして、とりあえず必要なものだけで準備しよう」
「ぶーっ……」
見えないけど、きっと頬を膨らませたのだろう。
「ま、いっか。こっちがお招きしたんだもんね。はじめちゃんの言う通りにしてみよう! んじゃ、早速威力を試してみるねっ!」
「威力を試すって……どうやって?」
「こっちだよっ」
リアライズに手を引かれ、店の中央に置かれたテーブルへ向かう。テーブルには小型の液晶テレビが置かれており、それにWiiが接続されている。リアライズはコントローラーを手に取ると、
「Wiiに似てるけど、あたしが現実化した戦闘シミュレーターなんだ。で、はじめちゃんが提案してくれた設定を更新したソフトを……リアライズっ!」
叫んだ。事務所がピンクの光に包まれたかと思うと、宙にこつ然と円形のディスクが現れる。ラベルには『超闘!万☆能☆戦☆姫☆リアライズHC』のロゴとともに、勇ましくポーズを決めたリアライズと、それを応援する僕の、ややハンサムになった顔のアップが描かれている。ちょっと、いや、かなり嬉しい。
彼女がそのディスクをシミュレーター本体に差し込むと、真っ黒な画面の中央に照射されたスポットライトの内側から、きらきらと輝きながら真っ白な詰襟に身を包んだ白峰涼が現れた。
『聖衣着装ッ! 絶対正義ジャスティンッ!』
ポーズを決めると同時に、白峰涼は絶対正義ジャスティンに変身した。
「いっくわよおっ……ΩフォームHCっ!」
リアライズが飛び、空中でΩフォームHCに転身した、ものの、そのビジュアルは僕の想像とかけ離れたものだった。ただパーツの大きさが三倍になっただけ。そのままリアライズは三倍の大きさになったコントローラーを振りかぶり、画面の中で不敵に笑うジャスティンに襲いかかる。巨大なコントローラーが七色の光を引き、斬った!
……と思ったが、ジャスティンは元通り、そこにいた。
「だめだわ……」
着地し、両膝を床につけたまま悔しげに呟くリアライズに、僕は駆け寄った。
「どうしたんだ? ジャスティンは飛べない。空中から攻撃するレインボースラッシュは圧倒的に有利なはずだ。一回ぐらい外れても、連続で攻撃すれば……」
「……だめなの」
リアライズは悔しげに言った。
「レインボースラッシュは一転身中、一回しか使えない。Ωフォームはとっても集中力を使うから、あたしの気持ちが持たないの。Ωフォームを使うなら、一回で、完璧に決められる技でないと厳しいわ。集中しなくていい技なら何回かは使えるけど、それでも問題は残るわ」
「問題?」
「うん。ジャスティンのヒーロン、完全直感よ」
「完全直感……?」
「うん。極限まで研ぎ澄ました五感で、敵の攻撃を完璧に予測するの」
「あらゆる攻撃を予測できるとしたら、回避は簡単だ。こっちがいくら攻撃力を上げたところで、当たらなければ意味がない。としたら、それは……最強だ」
「完璧主義者らしいヒーロンでしょ? それが厄介なのよねえ……」
ため息をつき、床にぺたんと尻をつけるリアライズ。同時に転身が解けた。フルマラソンでも完走してきたかのように息があがっており、額には汗がにじんでいる。
「だ、大丈夫?」
「うん……。少し休めば……」
消耗しきった様子のすももは、か細い声でそう言って、肩を落とした。
「あたし……苦手なのよね」
「苦手って……なにが?」




