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 と肩をすくめた。

「あの子はたしかに潔癖で完璧主義者だわ。だからこそ最高最強、理想のヒーローになった。長所は短所と表裏一体だから……」

「潔癖で完璧主義者か。性格まで母親似だな」

「脳みそまで筋肉でできてる馬鹿は黙ってなさい」

 さきほどの意趣返しとばかりに茶々を入れた赤道さんと白峰女史がにらみ合う。

「さっきから言わせておけば……表に出ろ!」

「上等よ! ひさしぶりにコテンパンにしてやるわ!」

 にらみ合いながら店のドアへと向かう二人。ドアが力一杯閉められ、キッチンからテルさんの悲鳴が上がる。残された青葉理事長がため息をついた。

「すまないな。話が途中だったね。ヒーロン登録者である君は知っているだろうが、ヒーロンは神の力……この星の誕生から存在する、創造神と破壊神の力の現れだとされている」

「じゃあ、ジャスティンは暗黒皇帝と同じく、破壊神の力に魅入られて……」

「単純に言えばそうだ。だが今回のケースが特別なのは、彼がヒーロー側であるということだ」

「ヒーローが破壊神にとりつかれて、悪の道に堕ちたってことですか?」

「悪……?」

 青葉理事長は少し眉をひそめてから、

「いや、君は誤解しているが、創造神と破壊神、この二者に善悪はない。善なる破壊の力もあれば、悪しき創造の力もある。烈の操る火のヒーロンは対象を焼き、私の操る水のヒーロンは対象を押し流す、どちらも破壊の力だ。逆に、暗黒皇帝ネロが用いた異空間から邪悪な怪物を召喚するヒーロンは創造の力だ」

「善悪は、その使い手次第ということですね」

「その通り。つまり、ヒーロンはヒーローを生み出しもするが、悪も生み出すということだ。創造と破壊、善と悪、これら相反する力は常に均衡しているため、本来、我々の戦いは、クール単位で清算すれば、創造と破壊が必ずプラマイゼロになるゼロサムゲームとなるのだ。だが、潔癖のジャスティンにはそれが許せない。絶対正義の名の下に悪を根絶するには、どうすればよいか。完璧な答えを求め考え抜いた末、ジャスティンは『ヒーロンが存在しなければ悪は生まれない』そう結論づけたのだ。そして残念なことに、それは、あながち間違いではない」

「ジャスティンは……白峰涼は、何をしようとしてるんですか?」

「あいつは、ヒーロンを持つ者をすべて抹殺しようとしている。年老いた老人から、生まれたての赤ん坊まで。まさに老若男女、容赦なく、完璧に」

「そんなこと……いくらジャスティンがヒーローだからって、許されるわけがない」

「それが、許されるのだよ。ジャスティンは次の番組ヒーローだ。その期間中はジャスティンが何を考え、何をしようが、全てが正当化される。国家もマスコミも無条件に、そして全面的にジャスティンを支援し、擁護する。涼はずっと、この機会を待っていた節がある。母親の雄子にさえ悟られず、入念に時間をかけて準備してきたようだからな。今や過去にヒーローであった我々でさえも、おおっぴらに動けば悪党に指定されかねない。もちろん、リアライズもだ」

「それで、僕になにをしろと……?」

 そんな状況で、僕みたいな人間が役に立つとは思えない。僕のヒーロンである妄想壁は、自分と自分が接触しているものにしかその効果が及ばない。こんなもので、あの絶対正義に太刀打ちできるはずがない。

「ジャスティンの行動理念は『正義は勝つ』だ。だから、あいつに敗北を与えることができれば、逆説的にその理念が揺らぎ、破壊神の呪縛から解き放つことができるはずだ」

「どうやって奴を倒すんです?」

「ジャスティンを倒すために必要なのはリアライズの強化だ。それに、君の力を貸してほしい」

「……え?」

「君は万能戦姫リアライズの教育係としてここに招かれた。他ならぬ、すもも自身がそう願ったのだ。君を自分の教育係としてこの秘密仮設基地リアベースへ連れてきたい、とね。さあ、わずかでも時間が惜しい。詳しい説明は昼食を摂りながらにしよう」

「だいじょぶよっ。はじめちゃんって、すっごいんだからっ!」

 すももは自信満々に、嬉しそうに言った。胸を張ったため、ブラウス越しにブラの形が浮き上がって見える。

「君には期待しているよ。一谷君」

 青葉理事長は咳払いをして、言った。

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