その後……
翌年、サロとロロは儀式を終え成人すると同時に婚姻の儀も行われた。婚姻の儀は特別に魔王城で行われた。二人は国民全員から祝福された。二人はまだこの時十二歳である。出産には早い年齢のため出産は数年遅れとなった。村も二人だけでなく住民はちらほら増えていた。もちろん人間だけでなく魔族も……。
こうして生まれた愛の結晶は無事全員人の子として産まれた。ただし長男はやや皮膚は緑がかっていたが迫害などなされなかった。
電気もガスも温室もある生活となった。サロもオロもつつましくも幸せなスローライフを送ることになる。
サロは初代魔王として、オロは初代魔王の妻かつ元四天王として特別にサロ城の地下に入ることが許された。そこでかつての戦いの歓談などを行った。今はタム村の村長でしかないサロは特別待遇を受けたのだ。かつての四天王らやキラの墓にお参りし勇者らと同窓会を開く。
魔族が築いた文明はシュクラが魔族化する能力を持ってないため徐々に衰退した。そこで次代の魔王となるべく魔王の仮面を探したがうまくいかなかった。なぜなら魔王の仮面を作り、神を宿す秘術はロロとロロを師事した魔導士しか持っていなかったからだ。そのロロはもう滅びている。ロロを師事した魔導士の姿を見た者はいない。もうこの世に居ないのかもしれない。
魔王の魔石を使うことも考えた。しかし、何も活かすことは出来なかった。
徐々に魔王城が持つ文明は衰退していくことになる。
そしてサロもオロも天寿を全うし、あの世に旅立った。
サロの魂はなぜか天高く昇って行った。
天界に居たマンモスに魂が吸収されていく。
「ありがとう、サロ。これから創世神サロとして天界を見守ってくれないか」
声の主は創世神ジャブダルであった。黄金の光の竜!
「はい、よろこんで」
エヴェンキ族の神話に登場する蛇の神ジャブダル。
マンモスと共に世を作ったとされるがマンモスの名は知られていたい。
しかし凍土の中から発見された女真文字によってマンモスの名前はサロという事が分かった。
そしてサロの冒険譚も、魔王の仮面の話も後世に伝わったのだ。
そして数年後に遅れてやってきた精霊が居た。
――サロ、サロではないですか
魔王の副官、シュクラであった。
マンモスから光が分離する。
――シュクラ!
その姿は魔王時代のサロ。
二人は天界で抱き合った。シュクラは特別に一時的に精霊でありながら天界に招かれたという。一時的な出会いの後シュクラは地上界に向かう。彼は再び精霊としての生を生きる。
それだけでは無かった。長男、次男、長女、次女も居たのだ。サロとオロはなぜか通常の人間より長生きだったため子が先に旅立っていたのだ。約十年ぶりの再会となった。
「お前ら……」
「「お父さん!!」」
――私が連れて来た
ジャブダルが連れて来たのだ。
――もしよければ南の島国に力を貸してくれないか。お前らの子孫が南に向かっているのだ。
その声にしばらく考えたのちにサロが重い口をあげた。
「やります」
――わしゃうれしいぞ
サロが見た島国の光景はロロに似た呪術師が暗躍している場面だった。好き勝手に天空から矛を出してかき混ぜて島まで作っているではないか!
「ちょっといたずらしてやろうぜ?」
そういって掌に焔を載せる。その焔が島に落ちていく。あるところは燃えたあとに豊かな大地となった。サロが居るシベリアとは対岸の地だ。あるところは針葉樹林と樹木が違う境目のところであった。ここにはサロ城並みとは言えないが樹木で出来た都市として生まれ変わる。
「とーちゃんすごい!! 本当に『魔王』だったんだね」
「まーな」
子どもたちはびっくりする。サロが魔王時代だった頃の姿を彼らは知らない。
「お前たち、暗躍してる奴と戦いたくはねえか?」
「うん!」
「決まりだな。この豊かな大地が俺の物語の第二章だぜ」
そう、まだ終わらないぜ俺たちの物語。
「オロ」
「何よ、サロ」
オロも十一歳のお四天王時代の姿に戻っていた。
「お前は半島に向かってる民を守ってくれないか」
「もちろん!」
◆
魔王城の文明はさらにに高齢化しながら滅びの道を向かうことになる。天寿を全うした魔族は元の精霊体に戻ってしまう。魔族同士での結婚を行えば子も魔族になるがいかんせん限界があった。そこで偉大なるサロの冒険の話を石板に刻むこととなった。石板はキラの墓の横に置かれることとなった。誰かにここにあった物語を後世に伝えるために。もう文字を操れるものも少ない。幸い魔法で石を削って文字を掘ることが出来た。
やがて……持っていた文字は失われ、シベリアの諸部族は元の原始生活に戻る。原始生活に抵抗を持った者は南下することとなった。
物語は終わらない。次なる章へ進む。




