第六話
サトラ村、オキミ村を三度奪還した。しかしもう精霊もほとんどおらず、村というには苦しい状況となった。さすがに発電所と水道は復旧したが。サトラ村の住民は二名、オキミ村の住民は二名となった。
ここを拠点にする屍鬼や骸骨兵、吸血鬼がサロ城をもう一回攻めたらひとたまりもない。予防策は打っておいた。サトラ村、オキミ村を攻略しながら体力を回復させる。傷は癒えていた。
「オロ、あと少し遅かったら顔に傷跡が残ったぞ」
「サロ、心配してくれてありがとう」
「お前にまで何かあったら!」
失いたくない。もうこれ以上。
「もう何も失いたくない!!」
そういってサロはオロを抱きしめる。
「ありがとう……」
「これ、新しい闇の面頬。付けてみて」
するとオロの顔にぴったり付いた。声も変わった。前の闇の面頬と全く同じだ。
「明日、いよいよ魔王城の攻略だよ」
「うん」
「生きて帰ろうな!」
「帰ったら言いたいことあるんだ」
――えっ?
その声はサロには聞こえてなかった。
◆◇◆◇
翌日……。
そしていよいよ敵の城に乗り込む。
「これが、魔王城」
サロはある意味感心していた。
「ずいぶんとサロ城よりも魔王城してますな」
シュクラが見るそれは結界内に暗雲が立ち込め雷が鳴っていた。それは内部からの自由すら自由に許されていないことを意味する。初代魔王以上にクズである事の証拠だ。
「結界!!」
「入れないぞ!!」
結界を壊す魔法を唱え結界を壊す。
サロらはさらに門番を倒し、門を開けた。
「ばかな!!」
そこはサロの故郷タム村だった。
「サロ、おかえり」
――近所のオキマおばさんだ!
「あら、オロも」
オロもびくっとした。
「あらまあ、お友達をたくさん連れて」
そう、いつも「まあ、泥だらけになって」という優しいおばさんだった。
城壁もある。天井もある。しかし村の配置はサロの人間時代の故郷そのものだ!!
「俺の……こ……故郷!! 人間時代の故郷だ!」
そして……。
「おとうさん!……おかあさん!」
そこに居たのはサロの父と母であった。
なんとオロのお父さんにおかあさんまで!
オロは闇の面頬を取って頭を下げる。
「おかあさん!」
「よく頑張った」
オロは抱きしめられる。
「お前の旅はここで終わるのよ。魔王として生贄になった試練の旅はここで終わるの」
え? ここで終わり?
「おまえの試練の旅も終わるんだ」
そうなんだ。
「サロ、オロ!! 一旦街を出るんです!!」
「シュクラ、でも」
「サロとオロを城門の外に出すぞ」
三人がかりで無理やりサロとオロを連れ出す。そのうえでなんで魔王になった後の姿を村人が知ってるんだとかオロは村人に闇の面頬を見せたことがあるのかなどとシュクラが問いただした。言われてみたらもっともだ。なんで僕たちのいまの姿を知っているんだ。どう見ても偽物じゃないか。してやられた。人の心の隙間を狙うとはさすが真の魔王。そして安定のクズっぷりだぜ。
「サロ、オロ。見てください」
シュクラが指さしたその先には……。
「あの……塔。光が……」
オロはこの塔の意味が分かった。
「おそらく幻影作ってるのはあの塔!! サロ、あの塔から攻略するべきです!」
「そうだな、ここに俺の故郷があるわけない。ごめんよ、みんな」
サロが頭を下げる。
「ごめんなさい」
オロも頭を下げ、そして闇の面頬を再び付ける。
「敵もなかなかだな」
トラが言った。
「塔の攻略に行くぞ」
「「おお!」」




