表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王の仮面  作者: らんた
第七章 お前がすべての元凶か?
76/84

第四話

 「死霊斬!!」


 キラが放つ剣は一斉に死霊をまとわりつかせる恐るべき剣である。


 「爆裂斬!!」


 爆発で玉座が吹き飛ぶ。サロは余裕でかわした。


 キラは傷を負うもののすぐに回復していく。さらに小さなパックで血を飲み干し、体力を回復させる。


 吸血鬼独特の威嚇で高速で移動するキラ。


 そしてトラやソラに切りつける。


 五対一だというのに全くの互角、いやそれ以上だ!!


 「闇黒呪!!」


 サロが呪文を出す。


 一瞬にして殲滅せんめつするはずの呪文が効かない!!


 「あいにく、俺も闇の者なんでね!」


 キラは牙を剥き威嚇する。


 「虎牙斬!!」


 カラを葬ったキラの剣術がシュクラに炸裂する。


 シュクラは膝をつく。後一瞬回復魔法を唱えるのが遅かったらシュクラは死んでいた。


 「風神斬!!」


 オロの闇の面頬がズタズタに切り刻まれる。闇の面頬は鱗が剥がれるように落ち、オロは素顔を晒した。


 シュクラは回復魔法を全員に唱える。致命傷とまでも行かなくとも全員が相当の傷を負った。


 トラもソラも満身創痍だ。


 「死ね!」


 勇者トラに剣が向かう。慌ててサロが獄焔呪を唱える。


 キラは業火を高速でのけぞりそのままなんとサロの脇腹に剣を刺した!


 (手ごたえあり!!)


 だが、血が出ない。キラは剣を引き抜いた。


 「やめろ! 友を傷つけて、何が面白いんだぁぁぁぁぁぁ―!」


 サロの怒りは爆発した。どんどんサロの体が大きくなり鎧と兜は散るように吹き飛び緑の血を流しながら腕がさらに二本生えていく。サロの腕は四本になった。尾がどんどん巨大になっていく!!


 「第二形態だ」


 シュクラが懐かしそうに言う。


 「これが俺たちの主君の第二形態」


 勇者は頼もしそうに、同時に恐怖を覚えた。


 もう勇者も呪術師もオロも副官も立ち上がることすら出来ない。


 「おまえら、下がってろ!!」


 声もどす黒くなった。


 そう言って四本の掌から爆裂呪を唱える。なんと従来の二倍の威力であった。


 尾でキラをなぎ倒し、拳で叩きつける。キラは壁に打ちつけられた。


 キラは血だらけであった。


 キラの体はそれでも修復を開始しようとしている。


 サロは巨大な腕でキラを拾い上げた。


 「あれ、ここは……。俺はいったい何を?」


 「お前、気が付いたのか?」


 「ここは、地下の真の謁見室」


 そしてキラは察した。自分の牙は禍々しく伸び、翼も生えていることに。


 「俺は……」


 自分は、もう人間ではなくなってしまったのだということを。


 「うがあぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 頭を抱えるキラ。


 「ようやく気が付いたようだな」


 サロが言う。


 「俺は魔王チュリュグディ、かつて呪術師ロロと名乗っていた奴、そう、あいつだよ。あいつに高位吸血鬼としての命を吹き込まれた。そしてせっかくサロに奪還してもらった故郷を襲い、村人を吸血鬼にした」


 サロはあまりのショックで思わずキラを降ろし手を離した。


 「「ばかな!!」」


 「「ロロだと!!」」


 「俺に魔王の仮面をかぶせた呪術師ではないか!!」


 「俺が勇者になった時にいろいろ伝授した呪術師!!」


 「なるほど……」


 血だらけのシュクラが立ち上がった。


 「すべては、彼が裏で糸を引いていたということだ。彼が思い描いた台本通りに行かなかった。だから彼は自分で魔王になった」


 「そうか……」


 突然高笑いしたキラ。


 そして涙を流す。


 「魔王様」


 キラはひざまずいた。


 「どうか、私めを殺してください」


 「キラ、俺はうれしいぜ。だってこんなに戦うことが楽しいなんてな。そしてやっぱ勇者らを引き入れて正解だったよ。お前一人だけでもこんなに強いんだからな」


 魔王は上を見上げた。


 「勇者三人と戦ったら、俺は死んでたな」


 もう一回キラをじっとみる。


 「いい戦だった。ありがとう。お前の罪、焔で浄化してやる」


 「ありがとう……」


 キラは涙が止まらない。キラの顔は感謝の表情であった。


 サロの四つの掌から閃光の珠が生まれる。


 「獄焔呪!!」


 キラは炭のような姿になった。


 それでもキラの体は修復が始まっていた。


 (これが、吸血鬼……!)

 

 「ソラ!! 死魔消滅だ」


 ソラは泣きながら最後の力を振り絞って死魔消滅呪文をキラに与えた。


 キラの体がまるで小さな星粒に分解しながら消滅していく。


 「終わった」


 そのまま意識を失い倒れるソラ。


 「ごめんよ……」


 そう言いながらどんどん自分の体が縮小していくことが分かった。サロは元の第一形態に戻っていく。二本の腕が縮小しながら脇にどんどん戻っていく。尾は小さくなる。敵を倒すとどうもこの体は第二形態を解除するようだ。


 キラだった者は焦げ付いた吸魔の鎧、吸魔の兜、吸魔の剣、闇の面頬だけ残っていた。もう鎧も兜も剣も面頬も元の原型をとどめていない。


 「みんな、死んじまったな」


 「キラもカラロもカラも、敵の兵士も、自軍も、民も弔うぞ」


 「サロ、ここで立ち止まっては……いけませぬ」


 「うがっ!」


 脇腹を抱えながら話すシュクラ。


 「分かってるぜ、でもそれじゃお前も戦えないだろ」


 「この調子じゃ、次こんな敵が来たら今度こそ終わりよ!」


 オロは恐ろしかった。


 「体を回復したらこちらから攻めるぞ、軍隊無しでだ!」


 反撃するのか。


 「シュクラ、オロ、ソラ、トラ。一緒に魔王討伐の旅に出るぞ。五人でだ。副官代理は犬魔族のケン、あいつにしよう」


「ありがとう」


トラが答えた。


「幼馴染として、うれしい。ありがとう」


 オロは思わず泣いた。


 「光栄です」


 シュクラは頭を下げた。


 「ソラ、寝てる場合じゃねえぞ」


 サロは二の腕でソラを抱える。



 こうしてサロたちの真・魔王討伐の旅が始まった!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ