第三話
地下四階に吸血軍はたどり着いた。勝利の時は近い。
「ここが地下四階」
吸血族が赤光魔の魔法を唱える。この赤光は吸血鬼にとって無害な光である。紫色の炎がダンジョンを照らす。石戸があった。開けてみる。
「何もないぞ」
迷路のようで実は一本道だった。なんども慎重に確認しながら進む。だが、誰も居ない。そんなバカな?
「ここは、生贄の祭壇のようだ」
なにか手掛かりになるものはないだろうか?
「直近で使われた形跡はない」
ここに居ても意味はないようだ。次に進む。
「広場も誰も居ない」
公園のようだ。ブランコなどがある。なぜダンジョンに……。ここだけ明るかった。そして吸血鬼にとってこの光は毒だった。吸血鬼がなんと焼けるようにして崩れ落ちる。
「何をしている!!」
キラは照明器具を破壊した。赤光だけの世界に戻った。
その遠くに気配があった。居る。奴らが……。
そして、彼らが見たもの……間違いない。謁見室だ!!ここが真の謁見室なのだ!
闇の面頬を付けて聖属性魔法を唱える者、エルフの長のような姿の者、青年呪術師、キラに劣らぬ勇壮な顔つきの青年戦士、そして玉座に居るのは毒々しい緑の皮膚を持つ少年。
友軍はあっという間に消えた。吸魔の剣で跳ね返さなければ自分もここで消滅してたことだろう。吸血軍の残りはキラ一人となった。
「久しぶりだな、キラ。俺は勇者トラ、お前と一緒に冒険したことを後悔するぜ!」
(何!!)
「僕は呪術師ソラ。僕も一緒に君と冒険して来た。残念だよ。君が死んで亡者になるなんてね」
「我は魔王の副官シュクラ。もう君の軍隊は居ない。君以外全滅だ」
シュクラが冷徹な声で言う。
「我は四天王が一人、オロ。その証拠に援軍は来ない」
闇の面頬を付けて全面闇の福音に守られた者が吹雪の声で言った。
「残念な知らせだけどヴォルドは我々の軍隊によって守ることに成功したよ」
玉座に座った者が言う。
「我こそ、魔王サロ。もう一つ残念なお知らせだけど地上に居る君の軍隊は殲滅した。ミサラスから来た援軍をなめてもらっては困る」
「ばかな……。吸血鬼を増やせば増やすほど我らの勢力は増えるはず」
「でもこうして死魔消滅の魔法唱えたら、ね」
ソラはキラに向かって死魔消滅を唱えた。キラは吸魔の剣によって魔法を跳ね返し無効化する。
「俺がお前たちの仲間だった、と」
「残念だなあ、覚えてないのか」
勇者が残念がる。
「じゃあ、始めるか、宴を」
サロは嬉しそうに言って玉座から立ち上がった。




