第三話
一方……その頃魔王チュリュグディは屍鬼兵と会話していた。
「お前は屍鬼だが、昼間も歩きたいと思わぬか」
「はい、もちろんでございます」
「屍鬼兵の全身に闇の鎧と兜を覆う事を考えた。もちろん鎧の下には闇の衣に闇の手袋、闇の靴下をな。それで戦えるだろう、昼間でも」
「ありがたき幸せ」
「さてお前も見ておれ。ちょっと挨拶しようと思うのだ……開けろ」
そう言うと謁見室からものものしい音がする。天井が開いた。結界も機能を停止させた。
魔王チュリュグディは謁見室から飛び立ち塔の最上階に降りた。
「よく見ておれ」
チュリュグディは竜になってからというもの千里眼の能力を得た。遠くのものを捉えることなど容易。
「むっ!」
そう言いながら目標を捉えると口腔に閃光がたまっていく。
チュリュグディが吐き出すとそれはサロ城に向かった!
サロ城の結界によって閃光は跳ね返った。
チュリュグディはヴォルドにもミサラスにもナゴルにもサトラにもオキミにもそれぞれ閃光を吐いた。閃光は結界によって全て跳ね返った。
(まさか、あれほどダメな子だったサロがここまでやろうとは)
「よし、合格だ。ならばこれはどうだ?」
千里眼の能力をもってすれば遠くに飛ぶものを捉えることも容易である。
「ぬっ!!」
千里眼で獲物を捉らえた。
チュリュグディの口腔内に蒼い閃光がたまった。
閃光が向かった先は物を運んでいる鳥魔族であった。
閃光を浴びたのに鳥魔族はなんともない。
鳥魔族は閃光に驚いたものの何事も無かったのでサロ城に向かった。
(では、第二幕だな)
(サロがどこまでやってくれるか、見てみようではないか)
(中から崩壊すればこちらのもの)
魔王チュリュグディは塔から飛び立ち根城に帰った。早速玉座に座る。天井が閉じる。結界も再起動した。
「魔王様、お望みの物を発見いたしました。保険躰です」
「ふむ」
変化に失敗した時に備えて無事保険躰は出産されていた。それはまるで蜘蛛と人間を合わせたかのような体だ。もっとも蜘蛛人は徐々に変化していき最終的には『ロロ』戻るのだが。
「保険躰は眠らせてあります」
(それにしても死体は旨かったのだろう。なかなかの成長だ)
(しかも本体が無事生き延びれば我の養分として活用することもできる。実に便利な存在よ)
(そう……こいつを食うことでより我の力がより増す!)
「保険躰を生贄の場に連れていけ」
「はっ」
その後魔王チュリュグディは来るべき戦に備えるべく保険躰を喰った。生贄の場は玉座の隣の隣の部屋だ。竜の体になっても動けるように城内は広くなっている。
生贄の台で咀嚼の音が響き渡る。
(サロよ、待っておれ)




