第十話
ここは練兵場。しかし今は賭博場にもなっていた。
「ぎゃ~また負けた~」
カラロは負けが込んでいた。
「はい、没収ね」
係員は冷酷だ。
「お前は本当運が無いな、カラロ」
(ま、これ実は二重税金って奴なんだけどね。胴元が確実にもうかるという)
模擬戦をそのまま賭博の対象にしたのだ。これなら賭博の常習が付かない。たぶん……。模擬戦の優勝者は出世も早く出来るようにした。だからみんな必死だ。
冒険者ギルドでCランク以上の腕の立つ冒険者が参加資格だ。
剣や盾は樹である。もっとも不慮の事故でそれでも死ぬ場合があるが、そのような状況にはさせないように心掛けている。呪術師の場合は魔術合戦となる。
――カンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカン―!
本物の剣戟ではないが十分迫力が伝わる。
「みろ、シュクラ。訓練にもなって同時に収益にもなったぞ」
「……」
シュクラは黙っていた。
二か月の賭博特別公認開催期間を経て、無事サロ魔王城の財政問題は解決した。
貨幣は供給でき、電気代、ガス代、水道代、保険料も徴収できるようになった。
どうにか地下の金庫も少量であるが貯まって来た。まだすっからかんであるが。
「最後の失地回復戦だな」
サロはずいぶんと勝ってるようだ。
「まあ、ね」
(ある程度兵士の強さを見抜けないと魔王失格だよ)
魔王はじっと四天王や三光魔を見定めた。
「やっとこの時が来た。もう暗夜の季節になるが……まあいい。これから俺たちは三光魔の故郷を取り戻す!!」
「「おお~」」
四天王も副官も三光魔も一斉に声を上げた。
彼らはまだ知らない。魔王チュリュグディの恐ろしさを。
そんな戦いの前にサロ、トラ……ちょっといい?と言ってきたのはオロだった。
三人はさっそく地下室に入る。戦争の前に彼らは子供に戻る。それも人間だった頃のサロとしてオロやトラらと遊ぶのだ。秘密の花園には地下なのに草花がすくすくと育っていた。そう、ここだけは人工の光とはいえ光を放っている。ゆえに謁見室まで光はほのかに届くので真の謁見室は実は真っ暗ではない。城の危機を乗り越えた三人は一旦戦いのことを忘れて夢中になって遊んだ。そう、魔王と勇者がここで遊んでいたのだ。
「お前らだけずるい~!」
そう言って来たのはソラだった。ソラはここで魔法でお手玉したりカードで遊んだりしてるのだ。
彼らにとってここは王城ではなく秘密基地に過ぎなかった。戦いへの恐怖を忘れてさせてくれる場所は別邸とここだったのだ。別邸と違う点はここは大人が魔族であれ人間族であれ入ってはいけない無言の掟があったことだ。彼らはここで少年の心を取り戻してから戦いに臨む。真の謁見室に近い場所に置かれたのにもわけがある。現実をはっと思いださせるための場所がかすかに見える位置にわざと置かれているのだ。そして彼らはやっぱり少年少女。賭事よりも純粋な遊びの方が大好きであった。
<第五章 終>




