第八話
二階の会議室では議論が繰り広げられていた。シュクラが机をたたく。あの冷静新着なシュクラがこんな行動に出るのはよっぽどということだ。
「サロ……やはりなりませぬ」
「なんで!? シュクラ!!」
「サロ、だってそれ借金ですよ。返せなかったらどうするんですか?」
「それは…‥」
「両替商の融資だって審査もあるし担保も取るのですよ? 国が借主の場合、担保は設定しませんが……しかし、通貨の信用を失い、物価が極端に跳ね上がる気がするんです」
シュクラは懐から硬貨を取り出す。
「ご存じの通りこのゼニ―は『二〇ゼニ―コイン』です。これが『二万ゼニーコイン』になったらどうするんです? 国が借金を返せないと国自体が壊れます。国民は苦しむんですよ」
借金が返せない国はなんとそうなるらしいのだ。国に担保を要求する両替商などない。むしろ俺たちが両替商にお金を配る方だ。その反面借金が返せないと国への信頼が失い硬貨の桁が跳ね上がって庶民は苦しむと言う。
「けどよー、副官。無いものは無いんだぜ」
カラロがサロを擁護する。
「だって金庫にお金ないじゃん!」
オロも言う。面頬は付けてない。悲鳴に近い声をあげた。
「そもそも保険料と家賃の未払いが多すぎるのです」
シュクラ社会保険料まで強制徴収するつもりらしい。そりゃ約束は約束だけどよ?それやったら民は命を落とすぞ。
――この国に暗夜が迫っている。いろんな意味で
「シュクラ。民草から……やっと停電から立ち直った人から保険料を徴収するのか。俺は暴君じゃないと言ったはずだ」
魔王なのにサロはやはり優しい。
「これは公的保険です。保険料払ってなければ本来は全額負担のはず。あるいは前代魔王のように物品税をかけるか」
物品税!? それは逆累進の悪税で有名だ。というか二代目魔王はそんなものを課していたのか。鬼だ……。いや魔王だからある意味当たり前なのかもしれない。魔王という身分たるもの本当はピンチの時にそういう冷酷さも必要なのかもしれない。でも待てよ? だから四天王から裏切り者が出たんじゃ? ダメだダメだ。
「鬼だ……」
カラが言う。
「ええ、私は今でこそエルフで魔妖族ですが、巨鬼族になることも出来るのです。私はたしかに『鬼』です」
「副官。今回ばかりは従えない。今回に限り、停電期間の保険料と家賃は全額免除だ」
――命はお金じゃ買えないんだよ
「「うおおおおお!」」
周りの衛兵も四天王も三光魔もサロの言葉にどよめく。サロの言った言葉がかき消された。
(いいこと思いついたぞ?)
「ところでシュクラ……この国は賭博禁止だったよな?」
また悪そうに……にやつくサロ。
「サロ!? 何考えてるんです!」
「二か月間だけ賭博を認めようじゃないか。賭博の利益を二割寄越せ。臨時の公営賭博場でな」
「そんなことしたら民が賭博を覚えてしてしまいます! 賭博依存に犯罪も多発します」
「副官、あきらめてくれ。無い袖は振れない」
こうして魔王は異例中の異例ともいえる副官反対の元、賭博を二か月だけ認めることとなった。