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魔王の仮面  作者: らんた
第五章 魔王が冒険者ギルドに加入して何が悪い?
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第二話

 魔王になったとはいえサロはまだ十一歳。居酒屋風の場所になんて行ったことが無い。まあ、魔王の躰になったらもうアルコールなんてなんともないんだけどね。


 「へえ、これが冒険者ギルド」


 サロは驚いた。急ごしらえとはいえ。


 「これが求人ボードなんだ」


 勇者が誇らしげに言う。


 「じゃあ、魔王の俺様が求人出そうかな」


 『骸骨兵・屍鬼兵討伐! 夜は屍鬼も出る。腕の立つ者を求む! 結界の拡張業務込み 魔王城城主 サロ』と記述した。


 討伐クエストも四つも出した。魔王城の周り、ヴォルド、鉱山、そして勇者の故郷だ。


 「うむ、我ながらいい出来だ」


 「求めるランクも出してください」


 「ランク?」


 「ええ、冒険者は『S級』、『A級』、『B級』、『C級』、『D級』、『E級』、『F級』と別れています。冒険者は誰もが最初は『F級』からです」


 「これってさ、自分も応募できるの?」


 「出来ますよ。前いたところは族長も直々やってたし」


 「じゃあ、俺も応募っと」


 「えっ? 魔王様!? 直々で!?」


 ギルドマスターが狼狽える。


 「悪いか? 経費節減だ」


 「で、ではこちらのメダルを……」


 「これはなんだ?」


 「F級メダルです。俗に言うFランメダルです。最低ランクって意味です」


 聞かなかったことにしよう。サロはメダルを仕舞った。


 「とりあえず。農地の部分も結界を拡大して農作物確保だな」


 「あ……はい、魔王様」


 「名簿のご記入を」


 「こうか?」


 「へえ、これって四天王も登録できるってこったな!」


 カラロが嬉しそうに言う。


 「はい、カラロ様」


 マスターは汗びっしょりだ。


 「四天王全員にF級メダルを渡すのは……」


 マスターは声が震えていた。


 「ルールだ。俺様がF級なんだからな。ルールはたとえ城主であっても守る。お前らもFラン登録しろ」


 「いえーい!」


 オロがうれしがる。


 ――Fランで喜ぶ人、初めて見た。


 ソラがこっそり言う。


 ――まったくだ。


 キラもうなずく。


 「仲間を集めてください。パーティーは四人まで。出会いも別れもここで行います。パーティーの再結成も可能です」


 マスターはやっぱり声が震えていた。


 「で、ここで飲むんです。酒の一杯を交わす」


 「じゃあ、お前と組む。トラ、ほら酒だ」


 「魔王様?」


 「魔王様は辞めろ。サロでいい」


 「勇者と組むので?」


 「いけないか?」


 「もちろんですとも!」


 トラはビールをぐびぐび飲んだ。サロと同じ十一歳である。人生初めての酒となった。


 「う……ま……い……か?」


 悪そうな笑みを浮かべるサロ。


 「おえっ!」


 トラは吐いてしまった。「水くれ」と叫ぶ勇者。


 「義兄弟の契りみてえなもんだな」


 ぐいっとサロはビールを飲み干す。


 「カル、来い。薬師が必要だ。町の外には天然の薬草があるだろ。それも集めて栽培しよう。医療の向上に役立つ」


 「喜んで!」


 カルはビールを飲み干した。


 「カラロ、一緒に組もうぜ。空から奴らは攻撃出来ない。鳥魔族は貴重な兵力だ」


 「おう!サロ!」


 「いい返事だ」


 カラロはビールを飲み干し、木製のカップを机に叩きつけた。


 「ではパーティーメンバーの登録をこちらに。ヴォルドで解散、結成する際はここでも確認いたします。この飛び声石で」

 

 「「了解」」


 「じゃあ、やるか、雑魚狩を」


 魔王が宣言する。


 「「おお~!」」


 「遅くなりました」


 「シュクラ」


 「俺たちも、冒険者になったぜ」


 サロがうれしそうに言う。


 「四天王だけ偉そうに椅子に座ってるってわけにもいかねえしな。それに放送局、ダメになって暇だしな」


 カラロが言う。


 「では、私も」


 「そう来なくちゃな、シュクラ」


 カラロは嬉しそうだ。


 「これって魔王と副官のパーティーも出来るのですか?」


 「そうです、副官様」


 「そう」


 シュクラも登録した。


 「F級メダルです」


 「ほお、これがF級。これで私もいっぱしの冒険者になったという事か!」


 ――誰か副官に教えてやれ、Fランは恥だと。


 ソラがこっそり言う。


 ――言えるか! バカ!


 キラが切り返した。


 ――俺たちも、このギルドではまだFランなんだからな!


 「私とサロが冒険に出るときは国の事……四天王のだけかに頼みますよ」


 「「はいっ」」


 こうして冒険者ギルドは前代未聞のスタートとなった。


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