第七話
城外のパイプラインの先端に来た。
「入れ替わり作業で出来るのだな?」
サロが念のために聞く。
「出来ます。どうにか」
虎魔族の現場監督が答える。
「ならば彼らに恩恵を与えようぞ。炎の恩恵を」
その声に前進激励の声があがった。
「相当の難工事だ。犠牲も出るかもしれない。それでも勇者の気持ちにこたえるぞ」
「「おお~!」」
こうして魔王城から勇者の故郷ナゴルまでパイプラインが急遽敷かれることとなった。
魔族は入れ替わり作業となった。
四天王も副官も今回のことでへとへとになった。
あらためて街を作るというのが大変という事が身に染みた。
もうすぐ冬がやって来る。あれからもうすぐ1年経つのだサロが呪いの仮面『サムド』の仮面を被され、村から追放され、魔王となってからもうすぐ1年。本当は焔の神で魔王じゃないということを証明するのにようやくここまで来たのだ。
「せっかくだ、別邸で休むか」
カラとカルはそれでは魔王城が守れないということでカラとカルは残ることとなった。オロは鳥魔族が運ぶ籠に乗って遅れてやってきた。
「旅客用の航空便の設定も考えてよ!」
「発想、いただき!」
オロの一声でこうして旅客用航空便がスタートした。もっとも、短い夏の間だけだが。
今回のパイプラインの建設によって魔族の大半が魔素を使ってパイプラインを作る技術を習得したのである。
「ガスは……焔は……偉大ですな」
シュクラがしみじみ語る。
「文字通り羽休みだぜ」
ゆっくり浴場に入って疲れを取るシュクラ、サロ、カラロ。
「今建設中の魔族には終わったらここで羽休めさせますか」
「シュクラ、さすがです」
◆
当然男子は男子用の浴場だ。湯の音が響く。
「オロはよく人間なのに魔素化の魔法を習得出来たね」
そう、オロはなんと人間なのにこの術を身に着けたのだ。
「素質があります。まれに人間も習得できます」
(へえ、シュクラそうなの。それが人間の手に渡ると厄介だな)
そのころオロは大浴場で伸び伸びと一人で入浴していた。
◆
四人は風呂を上がると牛乳を飲んだ。
「「やっぱ、これだな!」」
一休みするとサロは水晶で魔王城への連絡とナゴルへの連絡を行う。
「ナゴルはほとんどの鳥魔族も撤退して普段通りの生活だそうだ。もっとも結界石も渡したから、人間らに文明が渡ることもないだろう」
そう、この秘術が人間に渡ることがもっとも怖かった。
「ミニ板玉返しとかできねえかな。風呂上がりにぴったりとか思わない?」
(カラロ、いいね。でもさ……)
「ボールとかどうするの?」
「これは樹だが、これに小さい魔素を入れると…‥」
カラロが魔素を出すと小さいボールが出来た。
「で、テーブルで…」
「「おお~」」
「どうせなら板玉返しのようにネットとかも作ろうぜ」
「おいおい、俺たち疲れを取りに来たんだぞ」
抗議するシュクラ。
「翌日な!」
(苦笑いするしかねえ!)
カラロがなだめる。
こうして翌日、あっという間にミニ板玉返しが出来た。
「よし、サロ!勝負です」
「来い、シュクラ!」
最初の勝負はシュクラの勝利だった。
町の人も興味津々だった。
「新しい遊戯が出来た。この町の名物にしよう」
町は沸きあがった。




