第六話
「いよいよだな! いくぞ!!」
カラロの命令によって鳥魔族が一斉に籠を持ち上げる。
籠に乗ってるのは熊魔族や鹿魔族や狼魔族だ。四天王にして熊魔族のカラも乗っている。
「黒闇の鎧、黒闇の兜、黒闇の杖、黒闇の面頬も載せたか?」
カラロが吠えるようにして部下に聞く。
「載せたぞ!」
それを聞くとカラロはよっしゃとばかりに高く飛ぶ。
「大事な四天王様の武器と防具だからな。大事に運べよ」
カラロは剣を抜刀し南に向けた。
「二日で勇者の村へたどり着くぞ」
「「おお~!」」
◆
村人はラジオを通じて流される音楽に感動し、ニュース番組にびっくりした。
――これって魔界の話?
――なんて素晴しいんじゃ!
村人は囁きあった。
そしてその時はやって来た。
◆
二日後。
一斉に空から魔族が籠に乗ってやってきた。
村人は恐れおののいた。
勇者達やオロに助けを求めた。だが勇者らもオロもは黙ったまんまだ。
「オロ様、武器と防具はこちらに」
「ふむ、確かに」
オロは黒闇の鎧に黒闇の兜を装備し黒闇の杖を持ち最後に黒闇の面頬を付けた。
「人間よ、それらの恩恵は魔族のもの」
その声は吹雪の声であった。黒闇の面頬によってオロの声が変わった。
「三光魔の皆様、黒闇のマントでございます」
「ありがとう」
勇者らも全く魔族を恐れない。
「勇者……?」
「みんな聞いてくれ!! 俺は、俺は……魔族と共存することに決めた!」
村人に動揺が走った。
「まだガス管がここに届いていない。だけどガス管を繋げたらもっといい生活ができる。だから、もう魔族との対立を辞めてほしい! この生活は素晴らしかっただろ? だからもう無駄な対立を辞めてほしいんだ」
勇者は土下座で懇願した。
戦士キラも土下座だ。
「お願いします!!」
呪術師のソラも土下座する。
村長はしばらく黙っていた。
そして重い口を開いた。
「あいわかった」
「村長?」
「魔族との共存を求める者はこの輪へ、魔族との共存を断る者はこの輪来るのじゃ」
村長は杖で二つの輪を地面に書いた。
「じゃが魔族との共存を断るものはこの便利な生活は出来んぞ。水道管も電線も洗濯機もラジオも撤去じゃ。村の者よ、どちらを選ぶ?」
村人に動揺が走った。
子どもたちは真っ先に魔族との共存を選んだ。次に主婦も次々魔族との共存を選んだ。
「お前!?」
「だって、二時間以上もかかった洗濯が楽なんだもん。みて、このあかぎれ。私楽な生活のほうがいいの」
最後に男たちがしぶしぶ従う。魔族との共存を断る者は誰も居なかった。
「勇者は、生贄なんかじゃない!」
黒闇の面頬を外したオロは悲鳴に近い声を上げる。
「ほら、勇者。両親のところに行って」
オロはトラに言った。
「僕、生贄なんかじゃない……。運命は変えられる。それに、親孝行したかったんだ。ダメかな、こんな親孝行?」
その問いに対して両親は黙ってトラを抱きしめた。
「ごめんよ……」
母が涙を流す。
「お前の気持ち、受け取るから」
父もぎゅっと抱きしめた。
「決まったようだな」
村長が決断する。
「魔族との共存を選ぶぞ!!」
村中は歓喜の声で包まれた。