第四話
光が支配する真夜中に出発する。光の使者、勇者にふさわしい出立だ。そう、夕焼けに見えて実はまだ真夜中なのだ! それが白夜だ。
「いくぞ!」
鳥人が言うと籠が持ち上がる。
「「うわあ!」」
三人は驚く。初めて見る空の景色。一気に眠気が吹っ飛ぶ。
「大丈夫だ、平然としてろ!」
鳥人はなだめた。
「で、お前の故郷ってどこだ?」
「向こうの方角!」
「おうよ!」
鳥人の掛け声とともに籠がどんどん動いていく。
とても徒歩では成し遂げられないスピードだ。
◆
「途中、どっかで休むぞ」
朝から昼に差し掛かる。鳥人もさすがにばてて来た。
「「はい」」
「この距離じゃ君の故郷までガスパイプラインは一気には引けない」
さすがの魔族でもそれは無理だった。
「でも木炭ガス発電ならすぐ引ける。オロ様が考えた。町が完成したら木炭を定期的に供給しろよ」
「「はい」」
鳥人族部隊は魔除け魔法も唱えた。
来た道を魔王と一緒に帰っている。なんか不思議だった。
籠を運んでいる鳥人はシムロとトムロという名である事も分かる。
何食べてるのかと聞いたところ意外にも野菜であった。
そしてここに中継局を置けば勇者の村でもラジオがきこえるということだ。きっと村人は驚愕するに違いない。
ただいきなり工事を進めると人間が恐怖におびえる心配もある。
「そこで、発電所は遠くに作って電線を引く……で、最初は新築で見せてみるよ」
サロは悪そうな笑みを浮かべた。
「さ、再出発だ! ほら、ソラ起きろ!」
ソラ達も真夜中の行軍で付かれて昼寝してしまっていた。サロに起こされてしまった。一行は籠に載りもう一回空の旅を開始する。
真夜中に出た理由はずばり移動距離を稼ぐためにある。昼間に少し寝れば鳥人の体力も回復する。そして本来は夜となる時間にもう一回降りて野宿の準備を始める。これが鳥人族の旅の光景だ。今度は結界に加えて夜の色も付ける。不眠症を防ぐ魔族の知恵だ。そしてここでも中継局を置く。
そう、一行はラジオ番組を楽しんでいたのだ。
「さ、二十時の終わりの音楽だ。俺たちも寝るぞ」
生活リズムを壊さないように今度は深く、長く寝るのだ。だから今度は睡眠を誘発するハーブの茶も飲んだ。万が一動物に襲われても結界が警報を鳴らす。だから寝ずの番も要らない。実に合理的な旅だ。
勇者の村に近づくと白夜が無い。昼が長くなるだけだ。とはいえ非常に長い昼に変わりはないので生活リズムが狂うのは間違いない。




