第三話
魔王直々に門番のところに行き勇者らを「観光許可」から正式に居住者に変えた。
「はい、これが新しい結界石」
門番からもらった結界石をサロは三人に渡す。
「これで城のどこからでも入れるよ。と言っても入り口はここしかないけどね。飛べない奴は」
門を後にして一行はもう一回本丸に入る。
「そしていよいよ重鎮会議に入る」
謁見室の後ろの部屋に入ると魔法陣があった。オロは袋を持ってから転移する。
魔法陣で転移すると地下四階にたどり着いた。
「灯りをつける」
サロが付けるとそこには真の謁見室があった。
「ここが真の謁見室なり」
魔王が座ると四天王も副官も勇者らも跪いた。
「勇者の村に文明をもたらす前に我は勇者らに謝罪せねばならない。だから顔をあげて立ってほしい」
三人も四天王もシュクラも顔を上げた。
「ここに遊牧民族が攻めてきた。落城寸前だった。なぜここを攻めて来たのか、理由はわからないが、とにかく不意打ちで攻めてきたのだ」
三人をじっと見つめる。
「落城寸前だった。多数の人が死んだ。己の手で墓を多数作った」
落城……。その言葉に三人は仰天した。難攻不落に思えたからだ。
「どうにか打ち勝つと……生き残りの一人を生贄に捧げて、喰い、その力でもって我の魔力を増幅させ彼らの町を、国ごと滅ぼした」
幸い彼らの生まれ故郷は滅んでいないようだが。周辺部にあったからだろう。
「ついてこい、これが生贄の祭壇だ」
同じ階に生贄の祭壇がある。石戸を開ける魔王。
「我は、人食いだぞ?」
サロは勇者をじっと見つめる。
「勇者よ、この話を聞いても一緒に戦うか?」
「はい。魔王が人間の国を攻めた理由がよくわかりました。気持ちに変わりありません」
「そうか……ありがとう。じゃあ、真の謁見室に戻ろう」
全員……謁見室に戻ってサロは再び座った。
「我が直々に勇者の村に出向こう」
「ありがとうございます」
「ふむ、サロがここを長期間開けるのはよくないと思います」
シュクラが制止した。
「なら乗り物籠でも作ったらどうか? 俺たち鳥人は物を運んでいる。同じ感覚で四人を載せる。場所についたらサロとシュクラで交互に行きかう事も可能だ」
さすが鳥人族のカラロ。
「そっか、そういう手があったか」
「鳥人は念のために護衛も二人つけましょう。万が一籠から落ちそうな時は、サロにしがみつけ。サロは飛べるから」
三人はカラロのアドバイスにドン引きした。そりゃお前は空飛べたらそうだけどさ。
「そうだな。万が一の時は三人を守る」
サロも三人を守る決意であった。
「決まりだな!」
カラロは空を友とする。地上の者とは感覚がずれてるのだ。
「それと次回から、これを着てくれ」
サロが手を鳴らすとオロが袋を開けた。
「これは?」
勇者が聞く。
「黒闇のマントだ。大丈夫だ。人間に害する類の魔法などは付いてない」
シュクラの声を聴くと三人は物珍しそうに着けた。
「着けたか? 消すぞ!」
サロが灯を一瞬で消す……すると闇の中でもなんと見えるではないか。
「見える」
勇者が驚く。
「すごい!」
戦士も仰天した。
「信じられない」
呪術師はいったいどんな仕組みでそうなるのか全く理解出来なかった。
「次回から、闇の中で会議を行う。文字通りお前らは……闇で蠢く者となる。まあ、ありえないが万が一人間がこの城を襲い掛かった時は緊急配置に付くんだよ。三光魔が戦う場所は『ここ』だ」
「つまり、ということは……」
勇者は確認した。
「そう、副官と魔王と三光魔は一緒に敵と戦う。真の謁見室でな」
そこまで追いつめられる状況とならなければよいが。
「じゃあ、勇者の町を作るか!」
魔王はいよいよ念願の計画を実行に移す時が来た。