第一話
数日かかった。光の使者が最も強くなる白夜の時期に。もちろん今は昼間だが夜になっても太陽が沈まない。
森林に突如現れた畑。そして畑の中心部に荒れ地。
間違いない、ここだ。
近所の農家のばちゃんに話をうかがい、魔王城への入場許可をうかがう。
「入場目的は?」
「観光です」
「はい、これ結界石」
そう、事実上の「入場チケット」は近隣の農家からもらう。ちなみにここで変な回答すると通報されるそうだ。
「この結界石はこの入り口しか入れない観光者用だから。許可証は携帯してくださいね」
入場許可はすんなり下りた。
今度は城というだけあって街も大きかった。
極寒の地でも町が機能するよう町全体に暖房が行きわたるようにもなっている。
そのうえで一階に宿屋も薬屋もよろず屋も鍛冶屋も店という店はあった。
三人は一斉に宿屋に殺到した。まずシャワーを浴びて綺麗になる。
「ああ~、幸せ……」
三人はそのままベッドに直行となった。
◆
翌日……。
「行くぞ」
――勇者の証明ってあるんだよな?
――力を開放したら光り輝く。それが証明。一瞬だけな
さすが呪術師。証明方法まで分かっている。
――それを門番の前で見せるんだね
――失敗したら、ここの城下町の住民全員敵だぞ
――それだけは避けないと
「いくぞ」
戦士が合図する。
「すみません。僕、勇者なんですけど、魔王に謁見を願います。これが勇者の証明です」
カラが力を開放すると周りに突風が起き、カラの体が一瞬輝いた。
周りの住民はどよめき、悲鳴があがった。
門番の一人は腰を抜かし「本丸にどうぞ」と言った。
カラは力を解き放つことを辞めた。
もう一人の人間の門番は慌てて二階の魔王の執務室に向かった。
「大変です、勇者が、勇者が着ました!!」
「そうか」
「四天王を謁見室に呼んで来い。シュクラもだ」
慌てて正装を着込むサロ。鎧も兜も装着する。
「間違いないのだな」
「はい。全身が一瞬だけ輝きました」
「来たか……」
深緑の甲殻類は覚悟を決めた。