第一話
鳥魔族たちが遊牧民族の北進を伝える。
魔族は急いで魔王城の周りに掘りを作り、水を入れた。だが、ここは冬は凍土となる。氷を溶かしても湯気が出るだけ。無駄な作業だった。掘川は夏季にしか効果がないのだ。
「冬の対策を考えないとな」
(魔王ってこんなに大変なんだな)
そして、薬師のカルには新たな装備が与えられた。鍛冶屋が必死に作ったものだ。
血魔の帷子に血魔のローブである。ローブは表が闇に闇を塗り固めた色、内側は血のような赤色であった。
血魔の帷子もまるで血の色をしている帷子である。シュクラから手渡される。
カルはおそるおそる装着すると力が漲った。
「しかも、相手の血を吸うと自分の力に変えることができる。血魔のローブは闇や夜の中でも目が利くようになる。さらに夜、闇の中に居ると魔力を与えてくれる」
「ありがとうございます」
オロにはシュクラから黒闇の鎧に黒闇の兜、黒闇の杖、黒闇の面頬を渡われた。鍛冶屋の渾身の作品である。
「この装備も闇や夜の中でも目が利くようになる。さらに夜、闇の中に居ると魔力を与えてくれる。両方とも人間に害をなすものじゃない。呪いの類も入ってない」
オロは暗黒戦士の姿そのものとなった。オロの可憐な顔も面頬によって闇に包まれた。面頬は単に敵を脅かすだけでなくこの泥まみれの大地の泥除けという実用的な装備品にもなる目に異物が入ったらそれだけで命取りになる場合もあるのだ。
「御意」
オロの声も変わった。黒い声となった。
「これで真の謁見室で密談するときはもう灯りが必要ない」
装備の確認を済ませシュクラが振り返る。
「それとサロ。真の謁見室の近くに生贄の祭壇を再建した。生贄から力をもらう事で魔王としての力もより向上する」
「シュクラ、ありがとう」
「サロ、場合によっては人間を喰うことになるぞ……覚悟はいいか?」
「うん」
「カルとオロはこれから攻撃魔法を急遽覚えてもらう。地下四階にまずは行こうか」
そんな時人間の兵士が駆けつけて来た。
「魔王様! 大変です、騎馬民族が攻めて来ました」
(早い。さすが騎馬民族だな)
「なおのこと俺たちは地下四階に行く必要性が生じたな」
四天王も副官も俺も覚悟の目つきになった。
「民に伝えろ。城内の金庫室に逃げろと」
「はっ!」