第九話
ほとんど無人になった村。暗夜の時期は過ぎたとはいえまだまだ闇が圧倒的に支配する大地。宵が迫りくる村。そこにロロは居た。水晶を手にかざし光が消える。すると村はますます闇が支配するようになっていった。
村は死体が転がっていた。原型をとどめていない者も居た。
「おのれ、サロめ! まさか魔族の力を人間に与えるとはな。こいつは予想外だった」
ロロはかたくなに魔族の町に行くことを拒んでいた。
「これでは我が計画が失敗してしまう」
(魔王や勇者の死骸から出る魔石を取り込むという計画がな)
「見ておれ、サロ。お前の体からなんとしても『勇者』の光を出してやる」
(ふっ……そうだ、南の遊牧民族にこの事情を説明するか)
「ゾクよ」
そう言ってふっと何もない空間から現れたのはなんと羽妖精であった。
「北方の人間たちは魔の虜となったと人間に吹き込むのだ。そしてここを拠点にするように伝えよ」
「御意」
「ふむ。ではおまえにいつもの奴を」
それは何かの血肉が入った袋だった。
「ありがたき幸せ」
袋を手にすると羽妖精はふっと空間から消えた。もちろん、袋も消えた。
次にロロは水晶を懐に仕舞い……骸骨の杖を振りながら呪歌のような呪文を唱えた。まるで何かの舞のようだ。ロロは長い呪歌を唱え終えた。
「ふふふ……くくく……くっくっくっくっ」
笑い声に呼びかけるかのように骸たちが起き上がる。家から出る骸も居た。怨嗟の声を上げながらロロの周りを囲む。
「ふむ、お前らは今日からわしの手駒じゃ」
次々と骸に紫色の光を浴びさせるロロ。すると骸たちが自我を持ち知能を回復させる。
――死霊術
禁忌とされている術を何の躊躇もなく淡々と行っていくロロ。
「お前らは……太陽の光を浴びたら消える。だから闇の衣を装備させてやる。昼間は出歩くなよ。人間の血肉を喰らえばお前らは不死じゃ」
「「御意」」
胸に紫色の核を備えた元・骸たちが跪く。
「死は美しい。死こそすべてを解決する」
その言葉に元・骸たちは無反応だった。
「ふふふ……くくく……くっくっくっくっ」
ロロは笑っていた。
廃墟同然の町で。
元・骸たちを見ながら……。