第五話
地上に出て城門の反対側。その右奥にそれはあった。謁見室から割と近い。
「ここが敵の死亡者を含めた墓場です。いくら魔族とは言え我々は身内はもちろんの事敵を弔う気持ちを失っていません」
しかし、その言葉とは裏腹に墓場は荒れ果てていた。
「これはひどい」
魔王の力は偉大だ。重力(グラビティ―)の魔法を応用すれば巨石なんぞ簡単に動かせるからだ。これに加え花を添える溝を魔法で掘った。
◆
「実は初代魔王もそうなのですが……一度死んだ魔物を死霊系の魔物として生き返らせているんです」
「ええ?」
「もちろん、人間も……サロはやりますか? なお、二代目魔王は死霊系の魔物をかたくなに拒みました」
「僕も嫌だ」
即答だった。
「安らかに眠らせてあげたい」
「そうですか」
「個人的な意見ですが……私もその回答に正直ほっとしています」
改めて副官はサロに向き合った。
「ちなみにほかの魔族も死霊術を覚えたら、どうします?」
「禁止する。重罪にするよ」
「では今のところ、知ってるのは私だけです。貴方を含めて死霊術は封印にしますね……。私を見ればわかる通り魔物って実は死ぬのではなく依り代となる肉体が滅びるだけです。一定期間を過ぎると魔王の力さえ借りれば精霊体から元の魔族に戻れます。まあ……約十年ほどかかりますが。でも死霊術で復活させられると……そしてその依り代となった骸骨や死体を破壊されると……永久に魂も復活できません。精霊体ごと死にます」
「そうなんだ」
「だから死霊術というのは魔族の間でも忌み嫌われる存在なんです。魂だけの存在になっても、精霊だけの存在に落ちても長生きしたいんです。やすらかに」
「分かったよ」
「それに人間を引き込む時に死霊とか居たら普通に引くからな」
「ごもっともです」
「じゃ帰りますか」
ここは極寒の地である。墓場の石も支石墓と言って巨大で極めて強固である。雪の重さにも寒さにも耐えられるように出来ているのだ。そんな巨石群すらも破壊されたのだからなんという爆発だったのだろう。いかに過去の戦いが壮絶だったのかが分かる。