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魔王の仮面  作者: らんた
第二章 魔王ライフってもしかして快適?
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第一話

 とうとう、太陽がほぼ姿を見せない季節がやってきた。永遠に続くかのような暗夜。闇の世界だ。


「温室、作っといて正解だったな」


 サロはしみじみとうなずいた。正直、家族もいない、村の助けもない状況で、魔族の協力がなければ魔王である自分ですら、凍死していたかもしれない。


 それなのに、この季節に新鮮な野菜が食べられる。しかも穀物庫には穀物と塩漬けの肉がたっぷり。飢えを気にしなくていい冬なんて、人生で初めてだ。


(あれ? 魔王生活って……意外とアリじゃない?)


「はい。サロも、ちゃんと栄養は取ってくださいね」


 副官のシュクラも、どこか満足そうだった。


「それにしても、窓の外は極寒の世界なのに」


(魔王の力でガラスが簡単に作れるって、すごいよな)


「地下室を作ったのも正解だったな。魔術の練習場にもなるし」


「ええ」


 ちなみに、地下室に転がっていた骸骨はすべて片づけ、共同墓地に埋葬してある。ただ、いずれサロは人間を喰らわなければならない時が来る。そうしなければ、人間と同じ寿命で終わってしまうからだ。


(その時は……誰にも見られないように、ここで……な)


 サロは少しだけ考え込む。


(俺は、長寿を得て魔王として生きるべきなんだ。そのためには、まだやることが山ほどあるな)


「それでさ。羽妖精に、この極楽みたいな場所があるって、人間に知らせるのはどうだ?」


「いいと思います」


「あと、人間に夢を見せる魔法とかない?」


「暗示の魔法ですね。ありますよ。しかも、羽妖精族が得意です」


「それだ!」


 サロは拳を握った。


「いよいよ“モデルハウス計画”始動だな。でもさ、案内が終わってから魔族が出てきたら、人間ってどんな反応するんだろ」


「未知数ですね」


 だよなぁ。


「一応、確認する方法はあります」


「なに?」


「水晶を使うんです。空に浮かび、水晶越しに人々の反応を聞けます」


「すげぇ……!」


 浮遊しながら盗み聞き。さすが副官。


「もし『助けて』などの声が聞こえれば――」


「シュクラ、頭良すぎ!」


「ではサロ。地下室で新しい魔術を覚えましょうか」


「よっしゃ!」


 こうしてサロは、重力グラビティ系の呪文などを習得した。修練を終え、地上へ戻る。


「せっかくですし、お風呂場にシャワーも付けませんか?」


「シャワー?」


「蛇口に細かい穴がたくさん空いているんです。温室でも使えますよ」


「それ、最高じゃん!」


 こうして完成したのが、スプリンクラー兼シャワー。


「では……」


 シュクラが蛇口をひねると、天井から人工の雨が降り注いだ。


(魔王ライフ……もしかして、めちゃくちゃ快適では?)


 上質な服。清潔を保つ洗剤。人工の雨。村を追い出されたの、もしかして正解だったんじゃ? そんな考えが頭をよぎる。


 シャワーを浴び、タオルで体を拭く。


 (幸せだ!)


 サロは、その感覚を静かに噛みしめていた。

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