~序~
ここは後にシベリアと呼ばれる地の中でも北に位置する……。闇世が支配する地域。特に冬季になると太陽が昇らず一日中闇が支配する。南に住む人はこの地を「魔界」と呼ぶ。そして漆黒の世が支配する時期がこの魔界に訪れようとしていた。
この地では生贄を捧げる風習が残っている。ゆえにこの地に生きる者を「魔族」と蔑称する。
もちろん……人も対象だ。
特に出来の悪い子には呪いの仮面を被せて獣人にさせてしまう。部族追放のうえで魔族に変えさせるのだ。
吹雪が舞う。南の地では紅葉を楽しむ時……すでにここは魔が支配する空間となっている。
狩猟も何もできない病弱の上に間がどこか抜けてるサロ。サロが吐く息はどこか白く荒かった。全身熊の毛皮で防寒対策をしていた。そんなサロは十歳の時にしきたり通りに生贄に捧げられることとなった。
サロは六十本ある紐から仮面に通じる紐を一つ選ぶ。
サロが引き抜いたのはこめかみから角が出ている仮面であった。皮膚は深い緑である。
「魔王じゃ……」
村人のガランが驚く。サロが引き当てたのは単に獣人になる仮面ではなかった。
「『魔王』を引き当てたぞ~」
村人のキエンが周りに知らせる。村々は畏れおののき戸を閉める。
「お前は、今日から魔王になるのじゃ!」
呪術師がサロに告げる。
「え? 意味が分からないよ!?」
「有史以来三回。お前が三人目じゃ。お前は魔王の仮面を選んだのだ。これからお前は魔王の力を手にする」
「「抑え込め!」」
タム村の村人がサロを抑え込み仮面を付けさせた。顔が雪まみれになるサロ。その顔に仮面が覆せられる。
これはシベリアの地で起きた不思議なお話。