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第9夜 白い監獄

いよいよ、主人公当眞の試験回です!

最後まで読んでいただけたら嬉しいです。

 試験部屋は異様な空気が漂っていた。

 真っ白の壁にいくつもはめ込まれている発射口。

 外部は完全に隔離された空間は、まるで監獄(かんごく)のようだ。


 やっぱりモニターで見ていたとおり、縦横の広さは10mぐらいある。

 避ける広さ的には十分......それなのに――


(息が......詰まりそうだ)


 配布されていた目隠しを目の前までもっていく......。

 これを付けたら、試験が終わるまで視界は真っ暗......何も見えなくなるんだ。



 ドクンッ......。


「......っ!」


 俺の不安は的中した――。


 冷汗が止まらない......。

 震えが止まらない......。


 あの日の記憶が、頭の中で襲い掛かってくる――。


『205番、早く目隠しを付けろ!』


 はっ――と我に返る。

 試験前だってのに、何やってんだ俺は――


「はっ、はい! すぐ付けます!」


 思い起こされる『記憶』を押し殺し、すぐさま目隠しをつけた......。


 ギュッとゴムひもが目隠しの位置を固定している。

 激しい動きをしてもズレない感じだ。



 何も見えない......。

 本当に何も......なにも......。



 俺の視界は完全に、暗闇に包まれた――。



 ドクンッ......。


(こんな時に、出てくるな!!)


『それでは......試験始め!』


 開始と同時に起動音が鳴る。


(とにかく、動かないと!)


 突っ立ってるだけじゃだめだ。

 1回でも当たる回数を減らすために、動き続けるしかない――。



(あれ......?)


 まだ開始して数秒しか経っていないが、


 壁との距離――ってどれくらいだっけ......。

 一歩でどれぐらい進んでるんだ......これ。


 避ける広さは十分だったはずなのに、急にこの部屋が窮屈に感じてしまう――。


 分かってる。

 その思考が動きを鈍らせることくらい......。

 でも、考えずにはいられない――。



「当眞さん......大丈夫でしょうか」


「......約80%」


「ほえ?」


「五感による知覚の割合ですよ。 味覚1%、触覚2%、嗅覚4%、聴覚13%、そして視覚が80%。 普通の人間なら視覚情報を奪われて、普段通りの動きなんてできるはずがありません」


「視覚ってそんなに高かったんですね!」


「ましてや、その状態で無数のレーザーを避けるなんて――」


「それができなきゃ、パージストにはなれない」


「......っ! ヤミさん......」


「見届けよう......どんな結果になろうと、最後まで」





「いっ......!」


 突然降ってきた激痛――壁に頭がぶつかったんだ。


(くそっ! )


 壁に跳ね返され、尻もちをついた体をすぐに起こす――。




 どれぐらい経ったのだろうか。

 未だに壁と自分の距離感が全くつかめない......。

 ていうか、自分がどういう動きをしているのかすら分からなくなってくる――。



 絶え間なく、聞こえてくる起動音。

 レーザーの発射口から鳴るその音を、何回も......何回も聞き分けようと試みた。


 だが、すぐに諦めた――。


 上、右、左、下からも、間を置かず鳴る音の波。

『広範囲』と『一直線』タイプの音は違うみたいだが、それを聞き分ける余裕が全くない。


 そして......その数の多さに絶望感が込み上がってくる――。



(このままじゃ......)


 ――不合格。


 その言葉が頭の中を埋め尽くす。


(無理だろ......こんなの......)


 最初から無理だったんだ。

 俺みたいな凡人が、人を助けるパージストになんて......。

 シャドウと戦う兵士になんてなれるはずがなかったんだ......。


(ごめん智花(ともか)......)


 次第に体から力が抜けていく......。


 もはや集中も途切れてしまっている......。



 ――光は見えない。


 俺の目の前は、ずっと真っ暗だ......。




◇◇◇




「なんだぁ? もう諦めたのか? つまんねぇ~」


 パージストの男はため息を吐いた。


「腕疲れたし、あとは片手で適当に操作すっか」



 開始から20秒が経過したころ、当眞(とうま)の足は完全に動くのを止めていた......。





「と、当眞さん!?」


「息切れには早すぎますね......。 何かあったのでしょうか?」


「まままままずいですよ! このままじゃ不合格に!」


 リンとメリリスが困惑した様子を見せる中、ヤミは表情を崩さず、じっと見守り続けていた。


「当眞......お前の覚悟はそんなもんなのか?」




◇◇◇




(......あれ?)


 抜けていく意識を引き戻したのは、ポケットに感じた違和感だった。


(何か入れてたっけ......?)


 中に手を入れてみる......。


「......っ!」


 それは幼いころ、妹の智花が作ってくれた、お守りだった。


 今はそれを見ることはできない。でも、触れているだけで、なんだか安心する......。

 俺にとっては大切なものだった。

 だが、それと同時にこみあげてきたものは――


『怒り』の感情だった。




 家族との平和な日々......。

 それを壊したシャドウ。


(......あぁ、そうだったな)


 この感情を忘れてはならない。

 あいつらを許すことなんてできない。

 父さんと母さんを殺し、妹にも深い傷を負わせたやつらを......。



 ――俺はパージストになる。


 強くなって、強くなって、シャドウを一体でも多く浄化するんだ。


(父さん、母さんの敵をとるためにも......。 智花とまた、笑って過ごせる日々を取り戻すためにも......)



 こんなところで、終わってたまるか――。


読んでいただき、ありがとうございました。

次回もよろしくお願いします!

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