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第8夜 ストレスのはけ口

試験編はあと3~4話ぐらいで終わらせようと思ってます!

最後まで読んでいただけたら嬉しいです。

 

「ど......どう、でした、かぁ......。 これでぇ......分かり......ましたよねぇ......」


「まずは息を整えろよ、息を」


 聞いているとこっちまで疲れてくるような、酸欠気味(さんけつぎみ)のかすれた声。

 別にこっちは急かしてるわけじゃないし、落ち着いてから喋ればいいのに......。


(なんかデジャブを感じるなコレ......)


 それはそうと、リンの動き......あれはまるで、『人を騙すような不規則な動き』だったな。

 あの少女と比べると見劣りするが、当たる回数は他の訓練生よりは少ないように感じた......。


 てっきりコンピューターがランダムに操作しているとばかり思っていた......。でも違った。

 リンではなく、レーザーの動きを注意して見て、初めて気が付いた。


 レーザーがリンを追うようにして放射されていることに――。


「人が操作しているのは、なんとなく分かったよ」


「そ......そうですか。 それはよかったです。 頑張ったかいがありました」



『次、201から210番、中に入れ!』


 番号を再度確認する......205番。ついに俺の出番だ。


 緊張が高まる......。

 心臓の鼓動が速くなる......。


 まだ第一試練も始まってない。

 父さん、母さん、兄さん、俺の帰りを待ってる妹のためにも......こんなところで終わるわけにはいかない、いかないんだ――。





 ――【制御室No.5】



「見たか、さっきのやつ! 試験中に合格できないって確信して、動き止めてやがったぜ!ぶっははははは!!おかしいったらありゃしねぇー!!!」


 室内にこだまする笑い声――。

 4人のパージストたちはカメラ越しに訓練生たち顔色を見て、楽しんでいた。


「あ~、最高だなぁ~。 日頃の任務のストレスをこんなところで解消できるなんて......」


「つ、次は俺だ! 俺もまたやりたい!!」

「いや俺だ!! 俺が一番回数少ないはずだぞ!!」

「野郎のテストして何が楽しいんだよ。 俺は女の訓練生出たら呼んでくれ~」


「まぁ、待て待て。 次やったら交代すっからよ!」


 興奮する男たちをなだめ、近くに置いていたペットボトルの水を一口飲む。



「ふぅ~......あのロリ顔の訓練生には少し驚いたが、もう手は抜かねぇ! 俺の担当する奴らは初っ端から全力でつぶす!!」


「も......もう止めましょうよ、こんなこと......」


 制御室の隅に座っていたひとりの少年が口を開いた。


「......何か言ったか? マサキ」


 脅すような視線がマサキに向けられる。

 だが、少年は試験を正しく行うべきだという気持ちを強く持っていた――。


既定(きてい)のレベルを超えてるじゃないですか! これじゃ不公平だ! 」


「うるせぇな......」


「僕らが担当した訓練生たちだけ、試験の難易度が高すぎるなんて、ひどすぎますよ!! ケイレブ隊長にバレたらどうなるか分かってるんですか!?」


 間違いを正すため、少年は脅しの恐怖に抗いながら、そう言った......。


「ばれなきゃいいんだよ。 ばれなきゃ」


 男は、自分がやっていることに対して、何とも思っていない様子だった。

 訓練生たちの人生を決めるかもしれないこの試験を、そんな遊び半分でやっていいはずがない――。

 そんな自分とは違う、男のあまりにも非道な考え方に、マサキは顔をしかめる......。


(このままじゃまずい。一刻も早く、隊長に報告をしなければ......)


 男に気付かれぬよう、制御室の出入り口へ少しずつ歩み寄る......。

 ドアに手が届いた......。

 いっきにドアを開けようとした......が――


「おいおい、どこ行くんだよ」


 マサキの不審(ふしん)な行動に気付くひとりのパージスト。

 即座にドアを開いたが、腕を掴まれ、部屋の中に引きずり込まれてしまった......。





「うぐっ! ぐはっ――」


 逃げられないように、壁際で一方的な暴力を受けるマサキ。

 たまらず床に倒れたが、4人のパージストたちは容赦なく続けた。


「逃げようとした罰だ。 おらぁ!!」


 つま先で横から腹を強く蹴り、背中や頭を勢いをつけて踏みつける。

 絶え間なく与え続けられる苦痛に、マサキはただ体を丸め、耐えるしかなかった......。



「ごほっ......うぅ......」


「よぉ~し、これだけ痛めりゃ十分だろ」



 暴力の手を止める――。

 4人のパージストたちは、マサキをそのまま放置し、次の試験へと意識を向けた。


(い......いだ......い)


 体じゅうに残るズキズキとした激痛。

 少し体を動かしただけでも、それが何倍にもなって返ってくる。

 あざだらけになった背中、赤く腫れた顔、床には自分の吐いた血だまりが、痛々しくまばらに広がっていた......。


「え~と次は......205番くんか」


 意識が次第に薄れていくのを感じる......。

 マサキは自分の弱さを痛感し、自分の弱さを憎んだ......。


「さぁ~て、やっと手も温まってきたところだし、ここら辺で新記録狙ってやるかぁ! うへへへへへ!!」


 狭まっていく視界の中、目に映ったのは男の不敵(ふてき)な笑み......。

 それを最後に、マサキの意識はこと切れた――。




 ■




「まぁ、とりあえず不規則な動きを意識して動く――ってことだな」


「そうです」


 そう簡単に上手くいくかどうか......。

 結局得られたヒントはそれぐらいしかない。


『次、201から210番、中に入れ』


 とうとう自分の番号が呼ばれた――。


 いっきに緊張が走る......。

 心臓の鼓動が速くなる......。


「じゃ、じゃあ行ってくる」


 と、平静を装ってヤミたちに手を振る。


 ヤミたちには悟られたくなかった。

 俺の緊張を、不安を......。



 ――本当に合格できるのだろうか。


 自分の番を待っている間、何度も何度も、試験を受けている自分をイメージした。

 のだが、その考えが頭の中で、ずっとまとわりついて消えない......。


 こんな状態で試験に集中できるのだろうか......。

 目隠しをすれば、きっと『()()()』の記憶が邪魔をする。

 だから、試験が始まる前ぐらいは万全の状態で挑めるようにしておかないとダメなのに――


当眞(とうま)!」


 試験部屋の前で足を止める。

 呼び止めたのはヤミだった。


「『人が操作してる』ってことを意識するのはいいが、意識しすぎないようにな」


「あ、あぁ――」


「それと......」


 ヤミは拳を前に出し、笑って見せた。


「お前はもっと自分の力を信じればいいと思うぜ」


「......っ! 」


 その言葉が、俺の『不安』を『勇気』に変えてくれた気がした。


「悔いのないように! 行ってこい!」


「......あぁ! ありがとう!」


 力強く足を踏み出し、俺は部屋の扉を開けた。



 ここで終わるわけにはいかない......。

 絶対に合格するんだ――。


というわけで、試験は人の手によって行われていたのですが、当眞の担当するパージストはちょっとヤバそうですねぇ。当眞は合格できるのか!?

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