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第5夜 試練の試練

第5話目です。それでは、どうぞ~!

 

 説明会翌日の朝――。


 夜中の大我の騒音問題もなく、ぐっすりと睡眠がとれたおかげで、気持ちよく起きることができた。

 レオは逆に大我の騒音が無いと、少し違和感を感じてしまう――とか言ってたけど......。


 身支度を整えた後、俺たちは再度、説明会の時に座った座席番号を確認し合う。

 というのも、その番号がそのまま指導を担当するパージストに割り振られる――と配布資料に書かれていたのだ。


 確認してみると、どうやら俺だけ違う担当だったらしい。


「先に行っててくれ、俺はまだ少し準備があるから」


「そうか......じゃ、また後でな当眞」


「俺たちと指導受けられないからって、寂しくて泣くんじゃねえぞ? ハハハハハ!!」


「うっせ、さっさと行け!」


 部屋で二人を見送る......。


 ドアが閉じ、部屋には静寂が訪れた。


「さて......と」


 静かに足を運び、ベッドの下に置いていた、自分の大きな荷物カバンから「それ」を取り出した。


「......美穂(みほ)、おれ今日も頑張るからな」


 そっとポケットにしまい込む。


 大我の言うとおり、知り合いが1人もいない中で指導を受けるのは心細かった......。

 だが、そんなこと思っていられない。


 ――俺はパージストになるんだ。


 絶対に......。

 残されたたったひとりの家族のために......。




 説明会で配布された資料に書いてあった担当指導官の集合場所へ移動していると、同じように指導を受けに来た訓練生の姿がちらほらと見えるようになってきた。

 みんな資料を片手に持ちながら同じ方向へと歩いている。


(うわぁ、あいつ体格良いな。 え!? あの子、あんな小柄なのに試練受けんの!?)


 周りの訓練生を横目で見回しながら歩いていると――


「おーい、当眞じゃないか!」

「え? ヤミ!?」


 不意にヤミの声が聞こえてきて驚いたが、顔見知りに会えたことで、ずっと抱えていた心細さがパッと晴れた。


「ヤミも同じ場所で訓練受けるのか!?」


「そうみたいだな」


「良かったぁ~。 周り知らない奴ばっかりだし、俺一人でめっちゃ寂しかったんだよ~」


「あはは、俺も当眞と一緒で良かったよ。 じゃあ行こうか」


 一人で歩いていた時とは違く、俺は明るい表情と気持ちで、ヤミと並んで歩いた。


「どんな人が指導してくれんのかな?」


「俺が前に受けた時は、隊長クラスの人が指導に当たってくれたよ」


「マジ!? 隊長レベルの人が直々に訓練してくれるなんて……すげぇな」


 パージストは10段階の階級・称号名があり、隊長クラスは上から5番目の『力天豪(ヴァーチューズ)』と呼ばれている。


 俺たちからしたら、大先輩で――憧れの存在だ。

 そういった人たちからの直接指導はなかなか受けられない。しっかりと学んで強くならなければ。


 訓練の内容について会話を弾ませていると、集合場所の入り口が見えてきた。



 中央本部から少し離れた大きな施設。

 その入り口には、説明会ほどではないが、大勢の訓練生らしき姿が見える。


 俺たちも入り口で受付を済ませ、ラディウス職員の案内のもと、他の訓練生と行列を作りながら奥へと進む。


 施設内には、四方を白い壁に囲まれた――テニスコート半分くらいの広さがある部屋がいくつかあった。実験室のような作りだ。

 上の方に目をやると、二階の室内の中がガラス越しに見えた。なにか職員が機械を操作している。


 そうして、施設内部の様子を見回すことで、俺は行列で進む退屈さを紛らわせた。



 なかなか進まない行列だったが、ようやく目的の場所に着いたのか、体育館のような作りの場所に俺たちは並ばされた。


「んん、みんな静粛に」

 会話が交差するガヤガヤとした状態の中、低い男性の声がスピーカーから流れてきた。



 全員が静まり返ると、目の前――というか少し高い場所から声の主が姿を現した。先ほどのように、ガラス越しでマイクを持っているパージストの姿が室内に見える。


「えー、本日君たちの指導を担当するケイレヴという者だ。 よろしく」


 顔はよく見えなかったが、怪我しているようで、三角巾で左腕がつるされていた。


「ここに集まっているのは600人の訓練生。 できれば、私としてはその一人ひとりの訓練を見てやりたいが……そうなると、とても試練には間に合わない。 中途半端な訓練を施してしまうと、君たちを死なせることになってしまう。 そんなことは絶対にできないわけだ。 そこで――」


 ケイレヴが少し間をためてから言う。


「今から君たちに試練を受ける実力があるのか、測らせてもらう」


 唐突なその言葉に、緊張が走ったーー。


 周りの訓練生たちの間にも動揺の空気が生まれる......。



「その実力の測定方法を今から説明するが、そんなに複雑な内容ではないので安心して聞いてほしい」


 そう言うと、ケイレブが手で下の職員に合図を送った。


 すると室内が暗くなり、俺たちの前には、大きなスクリーンが現れ、テスト内容らしき情報が映し出された。




 説明されたテストの内容は、簡単に言えば、「四方からのレーザーライトを1分間避け続けること」それだけだった。


 レーザーが出る部分からは、発射される直前に短い機械音がなる。それを頼りに、レーザーの出る場所を聞き分けなければならない。

 発射されるレーザーの種類は二つあって、一つは対面の発射口まで一直線で出てくるもの。

 もう一つが、音が出た部分を中心として、隣接する発射口全てと、その中心から出てくるレーザーだ。

 角にも発射口があり、レーザーの死角はないらしい。


 音に関しては、一直線レーザーが軽く、高い音で、広範囲レーザーがわりと低い音らしいので、聞き分けはできそうだ。


 しかし、そのテストでは上位200名を通過者と見なし、残りは不合格として試練を受けることができなくなってしまうと説明された。

 当たった回数をカウントされ、多ければ多いほど、合格からは遠ざかってしまう......。


「試練を受ける前から、訓練生はふるいにかけられる――ってことか……」


 ヤミは大丈夫そうだけど、俺は合格できるか不安で仕方がなかった。


 でも……ここは、なんとしても上位に食い込まなければ。いや――食い込んでみせる。



 スクリーンでの説明が終わり、室内が明るくなる。

 その明るさに目が慣れないず、薄目にしていると、説明しそびれた事があったのか、ケイレブが言葉を続けた。


「あぁ、ちなみにこの試験中、君たちには――」


 俺はその次の言葉を聞き、自分の耳を疑った。


「目隠しをしたまま、これに臨んでもらう」



「……なんて?」



【残存訓練生――残り1万1830人】

読んでいただき、ありがとうございました。

次回もよろしくお願いします。

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