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黒崎浩二は嘘をつく -幼馴染を守るため、異常なる0組で異能力バトルな世界を生きる-  作者: 望月朔
≪第二章≫黒崎浩二の過去と未来(決別編)
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【0-2】幼少期の話


≪過去2≫


 幼稚園を卒園し、小学校に入学してからも、俺と優華との交友関係は奇跡的に継続していた。


 家の方向が同じ――というか、自宅と自宅が隣接しているのだから当たり前のことではあるが、共通の通学路を利用していた俺達はなにかと登下校を共にする機会が多く、道すがらの会話で自然と仲を深められていたというのもあるのだろう。


 その頃にもなると、声を発するよりも文字を追うことの方が好きだった俺も、幼馴染の少女と話すことの楽しさに気付き、意識的に会話を続けようと努力していたんだっけか。


 低学年の優華は、年頃の子供らしく好奇心と探求心が旺盛な女の子であって。

 身近な疑問から、無邪気さゆえの哲学的な観念に至るまで、下校中に彼女から様々な質問を投げかけられていたことは、今でも鮮明に思い出せるくらいには、色濃く記憶領域の中に残っていた。




   ***




「ねえねえ、浩二! 虹って、どうして虹色なの?」


「……どうして七色なのかってことか?」


「そう、それ!」


「光ってのは、いろんな色が混ざり合って出来てるんだ。それが雨粒みたいな透明なものを通すと、混ざってた色がバラバラになって見えるんだよ」


「とうめいなもの……じゃあ、ガラスとかでも同じことが出来るの?」


「そういう専用のガラスなら出来るはずだ」


「すごーい! ねえねえ、帰ったらやってみようよ!」


「……いや、流石に家では出来ないと思うぞ。プリズムなんて、そこら辺に落ちてるものじゃないだろうし」


「プリズム? プリズムってなあに?」


「ああ、プリズムってのは――――」




   ***




 もちろん、俺も優華も当時はまだ入学して二、三年の幼い子供であり、他の才人達のような並外れた知能など持っていない普通の少年少女ではあったのだが、しかしここにきて、幼少期から積み重ねた読書遍歴ならぬ読書偏屈歴が役に立つこととなった。


 質問の内容もまた年齢相応なものだったいうこともあったが、同世代の子供と比べれば人並み以上に物を知っていたおかげで、俺は優華からの質問に対して、大抵のことはちゃんとした答えを返し、知的好奇心にあふれた幼馴染を満足させることが出来ていたのであった。


 さらには、説明してあげる度に、優華が「すごーい!」って喜んでくれるのが嬉しくて、これまで以上に読書に励むようになったりもしていた。


 知っていることには答えてあげて、知らないことは一緒に調べる。


 おもしろそうな物を見つけたら、夜であろうと部屋まで持ってきてうきうきしながら話をする。

 楽しそうな場所を見つけたら、朝であろうと手を引っ張ってどこまでも連れ出してくれる。


 時間を重ねても、関係はまだ変わらない。

 まだ何も知らずに――何も変わらずにいられる年齢だったから。


 彼女と過ごす時間を、純粋に楽しめた最後の時期。

 きっとこの頃が俺の人生の中で最も幸せな瞬間であったのだろうって、今でもそう思ってしまうほどには、平和な生活を送れていたのであった。


 俺達の身に最悪が降りかかるのは、もう少し先の話である。


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