【0-1】出会いの話
≪過去1≫
三つ子の魂百まで。
幼い頃の性格は年をとっても変わらないというが、俺という人間は――黒崎浩二は、まさにその言葉を体現したかような子供であった。
生まれたころから内気で、閉鎖的で、可愛げなど欠片もないガキ。
快晴の青空な日に公園へ連れていってもベンチの隅っこで読書に没頭し、同い年の子供に話しかけられても返事どころか目を向けることさえしない。
幼少期から性根が腐っていたというか、そんな他人との接点をまるで作ろうとしない――他人に興味を持とうとしない性格が災いし、以後現在においてまでろくに友達も出来ない根暗な人間に成長していくわけだけど。
そんな俺にも唯一、たった一人だけ友達といえる存在がいた。
それが、この先の人生でずっと関わっていくこととなる少女――葉月優華であった。
俺の父親と優華の両親が中学からの知り合いであり、家が隣同士であった(というよりも、わざと隣同士で家を建てた)つながりもあって、俺と優華は記憶にない頃からずっと行動を共にしていた。
公園へ散歩に行く時も、庭でままごと遊びをする時も。初めてのおつかいに行く時も、時にはお風呂の中でまで、俺達は常に一緒の生活を送っていた。
また、俺の両親が共に研究者として働いていたため、忙しくて家に帰るのが遅くなる時期には、よく優華の家でお世話になったりもしていて。
そういった縁もあってか、俺と優華との関係性は日を追うごとにより深いものへとなっていった。
もっとも、当時の俺は自己中心的で我関せずといった人間であったため、優華の前でも普通に本を読みだしたりしていたようだが。
そんな、目の前に美少女がいるのに(幼稚園の頃からもう、優華は抜きん出た美貌をしていた)それを無視するという、呆れてものも言えないくらいに大馬鹿者な振る舞いを見せる俺に対しても、優華は笑って許すどころか一緒に本を読もうとしてくれたらしくて。
のちに成長してからその話を聞いたとき、優華の根底にある優しい性格もまた生まれ持ったものであったのだなと、俺は改めて彼女に尊敬の念を抱いた。
当時から明るく優しい子だった優華。
どこで遊ぶにも優華が主導で、俺はその後ろをついて回るだけの男で。
何とも情けのない話であったが、それでも――昔から人間嫌いであった俺でも、優華と過ごした時間は他のなによりも楽しいと思える、かけがえのない大切な思い出であった。