【9】平穏は続かない
≪3日目≫
符号学園に入学してから三度目の放課後は、取り立てて語ることもないくらい平和に過ぎ去っていった。
籠城作戦が執行されたため、その日からは俺だけでなく優華も一緒になって『ホーム』に引きこもることに。
優華は持ち前の人当たりの良さですぐに『ヴェノムローズ』のメンバーとも打ち解け、放課後の間はずっと女子三人組で楽しそうに談笑していた。
彼女達の楽しそうな会話を背景音楽に、護人が淹れてくれた紅茶を飲んで、暇つぶしに読書を嗜んで、それだけで放課後が終わる。
変化のない一日。変わったことといえば、せいぜい優華が篠森を眠姫ちゃんと呼び、篠森が優華さんと呼ぶようになったことくらい。
『転校生攻防戦』の三日目は、そんなことを取り上げてしまう程に、なんてことのない一日であった。
まるで、『転校生攻防戦』という戦争そのものが嘘だったのではないかと。
そう思ってしまいそうになるくらいに平穏な日常。
しかしながらそれは、嵐の前の静けさに過ぎなかった。
そんな平和が、いつまでも続くなんてことはない。
俺達が巻き込まれた戦争は、虚構でも錯覚でも道楽でも児戯でもなく、確かな現実として存在する、人と人との戦いなのだから。
翌日、『転校生攻防戦』四日目。
この日を境に、戦争は一気に終幕へと動き始める。