95話 押せば命の泉湧く
あけましておめでとうございます
本年もよろしくお願いします。
「お待ち下さい!」
黙って飛び立とうとしたお館様の脚にしがみついた。
「離せ、飛べん」
「駄目です!連れて行ってください」
「無理だな、ここにはお主の【治癒】が必要だ」
「お館様にもボクの技能は必要です」
互いににらみ合う
面頬同士で
なんとも締まらない。
「時間が無駄になる、脚は邪魔だ背にすがりつけ」
お館様が折れた。
イナヅマの本体の背中の突起に脚を掛け首元に両手を回し縋り付く。
「着いたら振り落とすからな、勝手に着地しろ」
「承知」
砂塵を巻き上げ舞い上がる一七ニ〇様(本体)とボク。
見上げる領兵さん達。
ごめんよ、まだ死にかけている仲間がいる、千切れかけた脚を繋いで欲しい、そんな言を飲み込んで見送ってくれる戦友たち。
わかってる、お館さまを最後までお守りするから、許してほしい。
そんな心を残しながら次の戦場へと飛び立つ。
「お館様先程の救援要請の敵は”魔王”なんでしょうか」眼下を流れる森の木々を見ながら内緒話回線でお館様と一七ニ〇様(本体)へ繋いだ。
「…知っていたのか、判らん、魔導騎殿たちでなければ魔王の姿かたちなどは判断がつかん、人間が魔王を確認したのは千年前の一度きり、伝わっているのはその時の魔王はヒト型で魔法を使い角と黒い翼を持っていたと言うことだけだ、次の魔王が同じ姿形をしている保証は無いがな」
ドンピシャじゃないですか、通報と。
「イナヅマどの、対魔王戦に何か有効な方法は御座いませぬか」
そうだ、一度戦って勝った人…管理知能さんがいるではありませんか。管理知能さんは額から出る(多分)圓明流光線で下に見える主だった魔物を狙い討ちしながら答えてくれた。
「いやはや、あの時は、惑星級…本気出したらこの星自体に影響が出る等級の魔導騎十数機で囲んで殴り倒したから何が効果的だったかよく分からないんだよね…」
どこ吹く風かと他人事の様にのほほんと答えるイナヅマ。
「まぁ空間歪ます級の攻撃で飽和させ続ければいつかは倒せると思うけど」
それ、今無理じゃん。倒せないじゃん。
「ならば倒すより封じ込めた方が効果的ですかな?」
「封じ込められればね」
一七ニ〇様どっちの味方ですかい。
『イナヅマ、羽生さん入ってる?』
『お、諏訪久違いが判る?』
『うん…結構前から』
『ぎゃふん』
イナヅマは時によってふざけて居るときと真面目な時があったけど。
本来のイナヅマは真面目な方でふざけて居る方が羽生さんなんだよね。
今は羽生さん七分のイナヅマ三分と言ったところかな?
「おほん…正直、本物の魔王が出て来たら普通の兵士の出る幕はないな。犠牲が増えるだけだ、全軍後退を奨める」
「……」
お館様は無言で行く先を見つめている。
やがてポツリと呟いた。
「時に女婿よ。その…美都莉愛ち…とはドコまで行ったのかな?」
…はァ?
何言ってんのこの人。
「…忘魔の里から奈落まで行っておりますが…」
「そうでなくて」
知ってますけど。なぜこの御領主。娘の事になるとポンコツになる?
「そのだな…近いうち爺になるかもしれんと考えれば色々と心の準備というものがだな…」
殴っていいですか?
「…まだ接吻だけです(指先と面頬に)あとハグしました(合体魔法矢撃つとき)」
「きっ!?はっ!グッ?」
少し盛ってみました。合体(魔法)もしましたまで言ったら衝撃で死んでしまうかもしれないので控えた。
あのとき思わず合体って言っちゃったけど冷静になって考えたらちょっとヤバい命名だったよね、あの時は必死でそこまで頭が回らなかったんだ。
でもあの時美都莉愛は「いい」って言ってた気がしたけど…まさかねキキマチガイダヨネ…アハハ。
「んグッ!」
突然ゾクリと走る寒気、瞬間凍る背筋。
流石イナヅマ。
周囲を丸い不可視の球体が取り囲むのとその外側が目もくらむ閃光に包まれるのとがほぼ一緒だった。
「【耐魔殻】」
同時に【捜索】をかける。
「亥の子(11時)方向、距離六町(700m)」!反射的に叫ぶ。
震えが走る。
一七ニ〇様(本体)が魔法で防いでくれなければお館様はともかくボクは即死だったと確信する。
「よく気が付いたな諏訪久」
「イナヅマだって気づいて…」「いや、まさかこんな遠隔から撃ってくるとは思わなかった」
結構余裕な物言いに聞こえるけどなぁ。
「…二人とも無事は良いのだがもしかして今墜落というのをしているのではないかな?」
ボクを背負った一七ニ〇様(本体)は落雷の直撃を受けた態で真っ逆さまに急降下している。
イナヅマ…というより羽生さん何だろうなこういう作戦思いつくの。
森の木々の中に落下の瞬間、ボクは一七ニ〇様(本体)の背中から飛び降り少し離れた茂みの中に転がり込んだ。
【飛空】を使って身を軽くしたので楽勝だ。
どどど!
と、轟音を上げて落下した森の周囲の木々は千切れ跳び、まあるく凹んだ地面の底で仰向けに横たわる黄金の魔動騎一七ニ〇様。
着地の瞬間【衝撃】で落下の衝撃を相殺しているので損害はほぼゼロ。
お館様も無傷のはずだ、多少ビックリされたかもしれないけれど。
先程【捜索】した方向から魔法で攻撃して来たと思しき魔物が近づいて来て居る。この仰角から行けば。
『イナヅマ、空から来る』
穴の底に横たわるイナヅマの代わりに観測手として周囲の魔力の澱みを伝える。
森の木々の隙間から見える空に黒い影が映った。
頭部に二本の角と巨大な蝙蝠の翼を携えたヒト型のソレはいきなり片手を振り上げた。
【落雷】
今度は”窓”が見えた。やっぱり距離が遠すぎると”窓”が見えなくて複写できないのか。
「いきなり撃つかよっ!」
死んだふりをしていた一七ニ〇様は再度【耐魔殻】を起動。
飛び起きながら【落雷】を回避した。
黒い翼を羽ばたかせながら丸い窪みの反対側の縁へ降り立ったソレは魔物語で何やら語っている。
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(倒れてる相手でもとどめを刺してから近づけと最近教わってね)
ニヤニヤと牙を剥きだしなが笑う皮の張り付いた骸骨の表情。どこかで見た記憶がよぎる。
「一七ニ〇殿、こやつは”魔王”ですかな?」
お館様のどこか飄々とした声が聞こえる。
「いや、まだ”魔王”そのものではないな、外観と魔法から言って【悪魔】系多分【大悪魔】てやつだ」
微かに声の振るえるイナヅマ。最強の魔導騎様が?
『【悪魔】系は…特に【大悪魔】級は通常迷宮の深部にしか出ない…少なくとも千年前はそうだった、他の魔動騎が戦ったデータはあるが私自体は初戦。その上五百年ぶりの騎装でまだ三割も馴染んでない…』
『イナヅマ。…まだ…十七代目様の事が』イナヅマはそれには答えず。
「…可汎、【悪魔】系の攻撃手段はまず魔法【落雷】、火炎の吐息、物理攻撃には全て【呪詛】の効果が乗ると考えて良い、【解呪】は使うが基本的には直接攻撃は受けるな」
「承知」
お館様は一七ニ〇様の助言を受けながらスラリと”金紗池の太刀”を抜き放った。
次回は来週更新の予定です。
更新情報は「活動報告」とツイッターで流します。
https://twitter.com/DarJack51
頑張りますので今後もよろしくお願いします。
追伸 何か新しいヤツ公開するらしいっす、朝方マイページ確認すると吉やもしれません。
…Ⅹも怪しいみたいっす。




